地球規模で進行している温暖化現象は、世界各地で毎年繰り返される熱波や干ばつ、その一方で集中豪雨や台風の巨大化など気象状況の激甚化を招いている。また海水温度や水面の上昇により島しょ国はじわじわと国土が失われ、国家存亡の危機に陥る国も出始めている。北海道では、それまで漁獲できた魚種が不漁になり、暖流域の魚種が大量に漁獲されるなど、極めて身近な現象として現れている。

その原因は二酸化炭素の排出のみならず、さまざまな要因が考えられる。ひとつの原因として熱帯雨林の伐採がある。ブラジルのボルソナロ政権では、アマゾンの熱帯雨林を大規模に伐採、牧場としたほか、南米各国をはじめ東南アジアやアフリカで同様の行為が違法伐採、盗伐のかたちで行われている。そうした違法に伐採された材木は、中国をはじめ、一部は日本にも輸入されている。その結果、貴重な動植物の多様性をも損なっている。

熱帯雨林に自生する多くの樹種は、人類に多大な恩恵をもたらしてきた。そのひとつが家具や木工芸に使用される樹々である。特に熱帯雨林に自生するローズウッドやブビンガ、マホガニー、ウェンジ、パドック、タガヤサン、黒檀、紫檀、チークなど、硬く木肌の美しい樹種が多い。中でもチーク材はかつてタイ産のものがデンマークに多く輸出されてきた。その背景には、デンマーク王室とタイ王室との良好な友好関係があったことが挙げられる。しかしながら、あまりにも大きな需要は資源の枯渇を招き、一時タイからのチーク材の入手が困難になったことがあった。最近では植樹も進み、プランテーションで育成されているようだ。

チーク材はウォールナット材、マホガニー材と並ぶ3大銘木といわれる重要樹木である。その特徴は硬く、耐久性・耐水性に優れ、材としての伸縮率も小さく、加工がしやすいものだ。加工のしやすさは鉋掛けの際に逆目を感じさせず、カッティングにも向いている。しかし油分が多いため接着に難があったが、デンマークではチーク材に適した接着剤を開発、家具の分野に大きな可能性を拡げた。

今回紹介するフィン・ユールのデザインしたチーク材の美しいボウルは、かつてカイ・ボイスン工房のターナー(ろくろ細工職人)のマグネ・モンセンの手により生み出された。ユールはチークのボウルを10種類ほどデザインしたが、中でも人気のあったのが写真のラージボウルだ。無垢材の一本から削り出すため、その材の乾燥が未熟であると割れや歪みを生じるため、ボウルよりはるかに大きな木塊から削り始める。少し削っては乾燥させる工程を繰り返し、やっと完成する。大きな木塊を必要とするため、その無垢材の入手が極めて難しいのだ。

デンマークのアーキテクトメイド社から復刻されたが、材料となる練度の高いターナー探しは大変なものだった。私もモーテン社長とともに北海道の置戸町まで赴き職人の方と交渉したり、カナダのブリティッシュコロンビア州の木材輸出担当者と交渉したりしたこともある。この2つの難題をクリアしたことで、やっと50年ぶりに名作が蘇ったのだ。多くの人たちに感謝。

サラダボウル ラージ
サラダボウル ラージ
サラダボウル スモール
サラダボウル スモール
フルーツボウル ラージ
フルーツボウル ラージ
フルーツボウル ウィズ トーズ
フルーツボウル ウィズ トーズ

1951年に、デンマークの建築家・デザイナーであるフィン・ユールによってデザインされたチークボウル。彼の家具作品同様に有機的な曲線・彫刻的なフォルムが魅力
1951年に、デンマークの建築家・デザイナーであるフィン・ユールによってデザインされたチークボウル。彼の家具作品同様に有機的な曲線・彫刻的なフォルムが魅力
木工職人が大きな丸太から1点1点削り出すことで生み出されるボウル
木工職人が大きな丸太から1点1点削り出すことで生み出されるボウル
1つのボウルを生み出すのには、熟練の職人でも3・4ヵ月の時間を要する
1つのボウルを生み出すのには、熟練の職人でも3・4ヵ月の時間を要する
底面にはロゴとシリアルNo.が刻印されている
底面にはロゴとシリアルNo.が刻印されている

■チークボウル(サラダボウル ラージ)
メーカー:ARCHITECTMADE(アーキテクトメイド)
サイズ:W340×H172㎜
素材:チーク材
価格:440,000円(税込)

<問い合わせ先>
designshop
https://www.designshop-jp.com/shopdetail/000000006817/ct1215/page1/recommend/
TEL.03-5791-9790