超断熱

幸せな暮らしの第一歩として、冬は暖かく夏は涼しく過ごすために、建物の断熱・気密は避けて通ることができません。温熱環境は人間の生活や健康に大きな影響があることがわかってきています。家で体をゆっくり休ませることができれば、会社や学校でも大活躍できるというものです。

一方で壁の断熱を強化していくと、通常の断熱材ではどうしても壁体が分厚くなるきらいがあります。ドイツでは重厚な石造りやレンガのような厚い壁の建物が元々スタンダードであり、今でも根強い人気があります。しかし日本では従来薄い壁が基本であり、おまけに敷地も狭いとなると、壁の厚さにも限界があります。そこで従来以上の高性能断熱材が出番となります。

そもそも「熱」とは何か?端的に言えば「分子のランダムな運動エネルギー」です。さらに「熱の流れ」には、対流・放射・伝導の3種類があります。このうち部材の表面では対流と放射がミックスした「伝達」、部材の中ではもっぱら「伝導」により熱が運ばれます。断熱=「熱を断つ」ということは、この3つの流れを何らかの形で抑制する、ということです。しかしこれは途方もなく深いテーマですから、詳しくは次回以降に考えましょう。

グラスウールや樹脂系といった従来からある断熱材も、徐々に断熱性能を上げてきています。一方で、従来の常識を超えた「超断熱材」も登場しています。「凍った空気」とも呼ばれるエアロゲル(図1)、冷蔵庫などにも使われる真空断熱材などは、従来の何倍もの断熱性を誇ります。断熱壁は分厚い、という常識を変えていくポテンシャルをもっているのです(図2)。

図1 超断熱 エアロゲル
図1 超断熱 エアロゲル
「凍った空気」ともあだ名されるエアロゲル。非常に微小なセルに空気を捕まえることで、従来の断熱材の10倍もの断熱性を得ることが可能です。
図2 真空断熱材
図2 真空断熱材
空気を完全に抜いてしまうことで、対流による熱移動を限りなくゼロに減らします。その断熱性能は20倍の厚さのグラスウールに匹敵するとのこと。内部空間に余裕のない集合住宅の改修などに、その極薄さが役立ちそうです。

また、建材の製造時や廃棄時の環境負荷を気にする「素材派エコ」の人たち向けに、羊毛(ウール)や木の繊維を処理したウッドファイバーなど、自然素材を活用した断熱材があります。こちらも要注目です。

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