自然に近い暮らしができる、動線がシンプルでバリアフリー、必要だけを詰め込んだ心地よさ、スッキリと空が広い外観。北海道でも「平屋に住みたい」というユーザーが近年増えています。北海道への移住を考えている人の中にも、北海道の雄大な環境に身を置くのであれば、住まいは平屋にしたい、という人も多いのではないでしょうか。土地条件や間取り、家事動線、雪の処理など、北海道で平屋を建てるにあたって検討したいポイントについて、実例を参考に見ていきましょう。
北海道の平屋の基本
北海道で憧れの平屋に住む。そのメリットは?
【北海道の自然を身近に感じられる】
平屋では常に1階で過ごしているため、自然を身近に感じながら暮らせるというメリットがあります。中庭のあるコートハウスにするなどして、屋外を生活空間に取り込む工夫もしやすいのが特徴です。地に根ざして北海道の豊かな自然の中で暮らすことの充足感を得られるのも、平屋の魅力の一つでしょう。
【動線がシンプルでバリアフリー】
平屋はすべての部屋が同じ階にあり、上下の移動がないため、洗濯・掃除・片付けなどの家事のストレスを軽減できます。将来を考えて、階の移動のないバリアフリーな暮らしを求める人が平屋を選択しているようです。
また、子どもの頃からマンションで暮らしてきた人にとっては、ワンフロアで過ごせる間取りの平屋は、慣れ親しんだ動線であるため、ストレスを感じにくいという声もあります。
【建物も暮らしも省エネルギー】
平屋は2階建てに比べると床面積が小さくなる傾向にあり、窓の面積も小さくなるので、エネルギーの損失が少ない建て方とも言えます。家の中での移動や暮らしにかかるエネルギーを抑えられることもメリットです。
もちろん、寒冷地である北海道においては、十分な断熱・気密の性能を確保して熱損失を防ぎながら、暖房費を抑える計画が必要です。
平屋は価格が高い?平屋のデメリット
【新築時の建築費が割高になる】
平屋は、構造はシンプルですが、2階建てと同じ面積で建てるとなると、建築面積は広くなります。それによって基礎工事の範囲が広くなり、工事費が2階建てよりも高くなることがあります。
同時に、建築後のメンテナンスが容易なことや、ゆくゆく大規模なリフォームをするにしても大掛かりに足場を組まなくて済むなど、平屋のほうがコストのかからない点もあります。
【陽当たりや風の抜けに注意が必要】
平屋は建物の高さが低いため、隣接地に高い建物があったり、住宅が密集している場所の場合、陽当たりが悪くなったり、上からの視線が気になるというデメリットがあります。
とくに北海道では冬の陽当たりが悪いと、日射熱を取得できずに暖房負荷が上がってしまいます。長く安心して暮らすためにも冬の暖かさ、暖房負荷を考慮に入れた上で、土地を読み解いた計画をすることが大切になります。
平屋の暮らしを学ぶ。北海道の住まい10実例
【シンハマホーム】熟練の腕で古材を生かした「北海道産木材100パーセント」の自然になじむ平屋[42坪・4LDK]
カラマツの外壁、ミズナラの無垢床、天井はトドマツ、引き継いだ古材は梁や大黒柱、窓台や玄関の上がり框などにフル活用して実現した北海道産木材100パーセントの平屋の住まい。山、空、草木が見える暮らしを希望し、入手した土地に立っていた母家と納屋に使われていた古材を活用したいと、それを活かせる工務店に家づくりを依頼しました。
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【アクト建築工房】洗練された大人ラグジュアリー。グレード感あふれる平屋[34坪・3LDK]
夫婦ふたりが末長く暮らせる、大人な雰囲気の平屋建ての住まい。平屋で十分なスペースを確保するため、母屋と物置で中庭を囲むコの字型のプランに。隣家が迫っているため、物置の壁を白く塗って反射光で明るさを確保したり、リビングを吹き抜けにして高い窓を設けることで採光を確保しています。
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【創樹】高断熱+全館空調で年中快適な温度を保つ平屋暮らしの住宅[41坪]
北海道の中でも寒冷なエリアである旭川市で、高性能でデザイン性も高い家を求めて建てられた住まい。2階に空調室を設えたほぼ平屋の建物で、東西に長く配置して、庭を見渡せる南側に大きな窓を計画しました。夏は暑い陽射しを遮り、冬はやわらかい光を採り込めるよう綿密に計算された庇は、快適さだけでなく経済面でも効果を発揮します。
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【北海道ハウジング】暮らしの不便を解決する優しいプランニングが魅力な三角屋根の平屋[33坪]
旧居の暑さ寒さや光熱費の高さに悩まされていたご家族が、家づくりを依頼したのは、積雪寒冷地で快適に暮らすための省エネ効果の高い住宅性能とデザイン性、新しい住まいへの希望を最大限に叶えるコスト配分などで、多くのファンを持つ地域工務店。夏涼しく冬暖かい、省エネルギーな平屋の住まいが出来上がりました。
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【小山内建設】日本最北端の都市で暖かく快適に暮らせる高断熱・高気密の平屋[33坪]
1年を通して風が強く、寒さも厳しい北海道最北端の都市、稚内に立つ平屋の住まい。床はヘリンボーン張りで、ブラックとグレーを基調に、スタイリッシュに仕上げた空間はご夫婦が希望したとおりのアーバンな雰囲気。リビングの建具にはガラス扉を採用し、玄関ホールやその先のユーティリティにまで視線が抜ける見通しの良さが、LDKにさらなる広がりを与えてくれています。
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【芦野組】高い断熱性能と自然豊かなロケーションで理想の郊外暮らしを叶えた家[29坪・1LDK]
周囲の自然となじむ道南スギの外観が印象的な平屋の住まい。老後を見据えて永く快適に暮らすため、冬暖かい住宅性能を重視し、暖房は薪ストーブをメインに床暖房とパネルヒーターを組み合わせています。家事の移動が最小となるよう、パントリーとキッチン、ユーティリティとクローゼットを隣接するなど、コンパクトな間取りにも工夫が見て取れます。
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【SUDOホーム】閉じた形で実現した開放感。平屋感覚の快適な暮らし[55坪・3LDK]
上から見ると「こぶしを握って少し開いたような」形の家。中庭を中心に、インナーガレージ、書斎、水まわり、広間、寝室が配されています。ガルバリウム鋼板がこの「こぶし」を覆い、外側から見えるのは採光用の小さな窓のみ。プライバシーが守られており、まさにギュッと閉じられた空間になっています。
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【アイ建築工房】「有機的建築」の粋を集めた 住み継がれる平屋住宅[30坪]
お手本は「普遍的な形である自然の姿に学び、建物が環境と溶け合いながら、住む人にもフィットするデザイン」の大切さを唱えた近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライト。北海道帯広市清流地区に建てられた、ライトの精神を受け継いだ平屋のモデルハウスです。
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【水野建設】薪ストーブのある日常でアウトドアを満喫するミニマムハウス[26坪・2LDK]
大好きな焚き火が日常で楽しめる薪ストーブのある暮らしを実現した住まい。ダイナミックな構造現しで、カラマツの木肌の美しさが際立つミニマムな平屋が完成しました。無駄のないワンフロアの空間構成は、コンパクトでありながらも心地よい開放感をもたらします。ユーティリティ、大容量のウォークインクローゼット、寝室が1本で結ばれている動線計画も使いやすさにつながっています。
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【木村建設】天然素材の質感と手仕事が息づく赤い屋根の木組みの家[48坪]
北海道へ入植して4代目。農業を営むHさんは、子どもが産まれたことをきっかけに、家を建てた友人・知人に相談しながら家づくりを計画。出来上がったのは、遮る建物がない広大な景色の中に立つ赤い屋根の平屋です。リビングの3間幅の大開口からはその贅沢な四季折々の風景を味わえます。
▶︎事例の詳細はこちらから「天然素材の質感と手仕事が息づく赤い屋根の木組みの家」
平屋の暮らしについてもっと知る!こちらの記事にも注目
形いろいろ、理由さまざま。平屋の見た目 Part.1/Part.2
注文住宅では、暮らし方に合わせて間取りが導き出されますが、それは家のフォルムにも影響を及ぼします。どんな「見た目」の家になるのかも家づくりでは気になるポイント。個性的な外観デザインの平屋には、それぞれの姿形に暮らしへの要望に基づいた納得の理由がありました。
▶︎記事の詳細はこちらから「形いろいろ、理由さまざま。平屋の見た目 Part.1」
▶︎記事の詳細はこちらから「形いろいろ、理由さまざま。平屋の見た目 Part.2」
家族の数だけ、かたちがある。平屋の間取り vol.1〜vol.3
条件が限られているようでいて、平屋のプランは敷地条件や周辺環境、家族が願う暮らしのかたちなどによってさまざま。異なる条件下で建てられた、さまざまな工夫とアイデアがぎゅっと詰まった多様なプランをご紹介します。
▶︎記事の詳細はこちらから「家族の数だけ、かたちがある。平屋の間取り vol.1」
▶︎記事の詳細はこちらから「家族の数だけ、かたちがある。平屋の間取り vol.2」
▶︎記事の詳細はこちらから「家族の数だけ、かたちがある。平屋の間取り vol.3」
いごこちの科学 vol.028/平屋づくりのポイントを考える
独自の視点から住宅性能研究の最前線を開いている、東京大学の気鋭の研究者・前真之准教授に、「いごこちの科学」をテーマに、住まいの快適性能について解き明かしていただきます。「北海道・寒冷地の住宅実例から考える室内環境について」をテーマに、断熱、開口部、蓄熱など、さまざまな視点から寒冷地における室内環境の改善ポイントを解説しています。
▶︎記事の詳細はこちらから「いごこちの科学 vol.028/平屋づくりのポイントを考える」
(文/Replan編集部)