壁面の傾きが判明。耐震・耐久性への影響は?[NPO住宅110番]
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壁の傾きについて
質問者/千葉県・MY750T
記事No.19546/カテゴリ:工事ミス・トラブル
お世話になります。壁面の傾きについて相談させていただきます。
・在来工法(木造軸組)、新築建売り物件(入居から2年弱)
・躯体は集成材を工場でプレカットしたものを使用
・建設住宅性能評価:耐震等級3
・箇所は2本間の隅柱に面する壁面(1階と2階)です。隅柱は通し柱ではなく、金物で締結されています
きっかけは、室内側の壁面と家具との隙間が上下で異なる事に気づき、壁の傾きを疑いました。ハウスメーカーに計測を依頼して計測結果をきくと、3㎜/1mで、国交省の定める住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準でも瑕疵の程度は低いとの事でしたが、こちらで市販のダイヤル式下げ振りを使用し数箇所を計測した結果、箇所によりばらつきがありますが、最大で1mあたり5㎜弱の傾斜が認められました。
同一の壁面で1階側は床面から天井側にかけて外側に、2階側は内側に、「く」の字状に傾いている様に見受けられます。その結果をハウスメーカーに再び伝え、再計測をした結果、最大で4㎜/1mを超える傾斜があると認めました。
躯体の傾きの可能性について尋ねると、「推測だが石膏ボードが断熱材や巾木を噛みこんでいることなどが原因と考えられる。つまり躯体の傾きではなく、耐震性など強度に影響はない。また、工業製品なので多少の誤差は存在するもので、前述の国交省の基準を超過していても必ずしも瑕疵があるわけではない」との説明でした。
感想としては、回答に一貫性がなく思われ不信感を持ちましたが、知見のある方のアドバイスを頂ければ幸いです。
- ハウスメーカー側の「工業製品の誤差の範囲」という説明は妥当で、一般的にもありがちな事象なのでしょうか。
- 今後の対応ですが、どうするべきでしょうか。
私としては、見栄えはさておき、耐震性や耐久性への影響が気になります。ただ、躯体の傾き調査となると壁面を取り払うような工事となり、躯体にも負荷がかかるのではと思います。構造耐力上主要な部分は引渡しから10年間は補償を受けられると理解していますので、定期的に傾きの計測を実施し経過観察してから判断するのも一手段と考えております。
以上、お手数ですがよろしくお願いいたします。
A:回答者/一級建築士事務所(株)北工房 代表取締役 栃木 渡
まず、傾斜基準の考え方に関しては、メーカーの方がおっしゃる事は正しいです。
3/1000とか6/1000の基準はそれを超えたから危ないとかそれを超えなければ安全とかの目安ではありません。問題のあった現場を調べてみると、6/1000を超える傾斜が発現している確率が高かったという事(という論文を拠り所にして)で、数値の目安としているだけです。血圧が135を超えたから、すべからく誰でも不健康であるという事ではありませんよね。それと同じです。
おそらくプレカット材でしょうから、そこそこ精度は高いので、材料の決定的なミスというのは考えにくいですね。考えられるとすれば、人間の手によるところ、つまり組み立ての際になんらかの手違いなどがあったか?と考えるのが合理的でしょう。
業務上、色々なお宅の床や壁の傾斜を測定しますが、0というケースはありません。1軒の家の中でも、あっちこっち好き勝手な方向に大なり小なり傾いています。工業製品(プレカット)と言っても、組み立てるのは人間ですから、そんなものでしょう。
非常に合理的で、賢明なお方のようで、
>定期的に傾きの計測を実施し経過観察してから判断
で、宜しいと思いますよ。
その時の判断基準は、細かな数値の大小より、同じ方向に同様な傾斜傾向があるかないか。それが、経年で進行しているか?になろうかと。ただ、地盤の不同沈下も、同じような症状を発症しますので、専門の方に任せた方がいいですね。メーカーの定期点検の項目に入れていただいては如何でしょう。
経験上、建物が傾けば、体感で分かります。歩いていて床に違和感があれば、6/1000程度の床傾斜はありますね。壁の傾斜だけであれば、気持ちは悪いですが、構造上不安があるという感じではなかろうかと思います。
質問者より
分かりやすいコメントありがとうございます。程度の多少はあれど、確かに人間の手で組むものなので誤差は付きものですね。問題の箇所は壁面ですので、感覚上、実用上は問題ありません。床面は水準器を当ててみましたが、今のところ問題はなさそうです。
ちなみに本件の壁面はキッチンスペースにあたりまして、大型冷蔵庫や食器棚で占有されております。ただちにボードをめくるのは負担が大きく、家内への迷惑も考えますと得策でないと判断いたしました。経過観察で対応したいと思います。
不同沈下についてはたしか20年の保証が付いていたかと思いますので大丈夫かと思います。
※この投稿・アドバイスには続きがあります。→続きはこちら
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・新築時からの柱の傾き 5/1000
・基礎の高さを測り間違え床が斜めになっている
・築7木造ツーバイフォーアパートの傾きについて 等
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