こだわり抜いたオリジナリティのあるデザインが実現できるのは、注文住宅ならではの魅力。それは室内空間だけではなく、外観も同じです。リプランでこれまで取材してきた数々の住宅も、ひとつとして同じ外観はありません。そこで今回は外観デザインの印象を決める6種類の外壁材「木」「ガルバリウム鋼板」「サイディング」「モルタル塗り壁」「タイル」「コンクリート」について、実例写真とともに説明します。

素材感が何より魅力。「木」

木ならでは素材感や温もり感が、木外壁の最大の魅力。樹種や色、板の幅や張り方によってさまざまな表情が演出できますし、同じ材でも仕上げ方次第で印象がガラリと変わります。また、年月とともに劣化したり汚れたりして、古びた印象になってしまう建材もありますが、年月の分だけ素材の味わいや魅力が増すのも、木の外壁材ならではです。

一方で木は天然素材のため、一般的に工場で大量生産する素材と比べて価格は割高に。美しく経年変化させていくためには、定期的なメンテナンスも必要です。木はほかの建材に比べて燃えやすい素材でもあります。防火地域や準防火地域に指定されているエリアでは、使用に制限がある場合もありますので、事前に確認しておきましょう。

道南スギを縦に張った片流れ屋根の平屋。カーポートも木で造作した、統一感のあるデザイン
直線的なフォルムが印象的なカラマツ横張りの外観。無公害木材保護保持剤「ウッドロングエコ」を塗装している
直線的なフォルムが印象的なカラマツ横張りの外壁
カラマツの外壁に、無公害木材保護保持剤「ウッドロングエコ」を塗装
木製パネルを白く塗装し、カリフォルニア風に仕上げた外観。外構と庭も外観の雰囲気に合わせた
木製パネルを白く塗装し、カリフォルニア風に仕上げた外観。外構と庭も外観の雰囲気に合わせた
道南スギ板張りの外観は、新築から数年経ち、雨風が当たる部分だけが鈍色に変化した
道南スギ板張りの外壁は、新築から数年経ち、雨風が当たる部分だけが鈍色に変化している

今や定番!「ガルバリウム鋼板」

アルミニウムと亜鉛の合金メッキ鋼板の建材です。耐食性・耐熱性・加工性に優れているのが特徴で、外装材として使用されることが多い仕上材です。住宅では黒やグレー、白のモノトーンを多く見かけますが、実はカラーバリエーションが豊富。幅も細いものから太いものまでさまざまで、多様な表現が可能です。

木や石やレンガ、タイルなどと比べると歴史が浅い建材ですが、それでも初登場から約30年が経過。安全性と信頼性が確立され、今は人気で定番の外壁材です。

黒いガルバリウム鋼板のボックスを重ねたような外観とシャープなコンクリート塀の組み合わせが目を引く
黒いガルバリウム鋼板のボックスを重ねたような外観とシャープなコンクリート塀の組み合わせが目を引く
ネイビーとグレー、縦張りと横張りの組み合わせで立体感を持たせた平屋
紅柄色に塗装したガルバリウム鋼板の外観。新築から16年経っても鮮やかなまま
紅柄色に塗装したガルバリウム鋼板の外壁。新築から16年経っても色は鮮やかなまま

白のガルバリウム鋼板を採用した立体的な形状の外観
同じガルバリウム鋼板でも、幅の狭い小波板張りにすると柔らかい印象に

価格を抑えつつ理想を実現。「サイディング」

「サイディングボード」とも呼ばれるパネル型の外壁材です。ベースの素材は、窯業系・金属系・樹脂系・木質系などの種類があり、モルタル仕上げに比べて、窯業系サイディングは2分の1以下、金属系サイディングは約10分の1の重さと建材自体が軽く、建物への負荷を軽減します。

工業生産のために品質が安定していて、比較的安価なのも普及の理由。パネル型なので施工性が高く、工期の短縮によって工事費用を抑えられるメリットがあります。一方で防水性能を備える表面の塗膜の耐用年数が10年弱と短いため、長く良い状態を保つためには、日頃のチェックと早めのメンテナンスが欠かせません。

タイル調の窯業系サイディングで仕上げた外観
白を基調に、石目調や木目調など表情の異なる窯業系サイディングを組み合わせて、個性を演出
ピッチの広い白の金属サイディングの外観に、エントランスの木がアクセントとなっている
幅の広い白の金属サイディングの外壁に、エントランスの木がアクセントとなっている
耐久年数が長い塩ビの樹脂サイディングを採用した住まい。樹脂サイディングは日本では採用が少ないが、アメリカやカナダでは普及している建材

高機能で表現の自由度が高い。「モルタル塗り壁」

セメントに水と砂を混ぜて練り合わせた「モルタル」は不燃性の素材で、外壁材・下地材・仕上げ材などとして、建築において幅広く利用されています。配合次第でどんな色にもできて、カラーバリエーションはほぼ無限。塗り方で模様も変えられるので、オリジナリティのある外観デザインに仕上げることできます。

パネル型や板状の外装材と違って自由度の高い仕上げが可能ですが、左官職人さんの手による施工なので、確かな技術力が必要とされます。またメンテナンスに関しては、だいたい15年に1回塗り直しが必要となり、費用もほかの建材より割高になるケースがあります。

真鍮で等間隔にラインを入れたモルタル仕上げの外壁
深い味わいの茶色の外壁。半円を描くようにパターンを付ける扇仕上げが美しい
1階部分の茶色と2階部分のレッドシダーが効いている白の塗り壁
モルタル外壁の上に、塗料と砂を混合して吹き付けるジョリパット仕上げは、外壁の耐久性が高めてくれる
モルタルの上に砂と混ぜた塗料を吹き付けるジョリパット仕上げは、外壁の耐久性を高めてくれる

メンテナンスフリーで高級感も演出。「タイル」

重厚感と高級感を演出するタイルの外壁。素朴な風合いのものから凝ったデザインのものまでバリエーション豊富なタイルは、汚れが付きにくいという特性から、新築時の姿を長く美しくに保てるのが大きなメリットでもあります。

タイルは天然資源からつくられた無機質材で、劣化しないのが最大の特徴。コストはサイディングやガルバリウム鋼板に比べて割高ですが、メンテナンスの内容や頻度の面ではメリットが大きいです。タイル自体は耐久性が高く、基本的にはメンテナンスフリー。下地やタイルの目地は劣化しますが、比較的安価に直せるので長期的なランニングコストを抑えることができます。

RC造の躯体の外壁をタイルで仕上げた、高い耐久性にこだわった住まい
乾式タイルを張った高級感のある外壁。メンテナンスの負担が少なく経済的
乾式タイルを張って仕上げた高級感のある外壁。メンテナンスの負担が少なく経済的
タイルを2色使いしたメンテナンスフリーの外壁と三角の小屋根が印象的な外観
タイルを2色使いしたメンテナンスフリーの外壁と三角の小屋根が目を引く外観

高い強度と独特な素材感が魅力。「コンクリート」

コンクリートは、セメントに水・砂・砂利を調合し、混ぜ合わせた材料。砂利が入っていてセメントの比率が高いため、より強度が高くてヒビ割れが起こりづらいというのがモルタル塗り壁との大きな違いです。型枠にコンクリートを流し込んで外壁を形成するため、ほぼどんな形でも施工できるのがコンクリート外壁の特徴です。

一体成型でつくられるコンクリート外壁は木造と違って隙間ができないので、気密性が非常に高いです。また30~50年の耐久性があるので、木やガルバリウム鋼板、サイディングよりメンテナンスの頻度も少なくて済みます。ただ、業者によって施工の精度にバラつきが出るリスクが高いのと、コンクリートがしっかり固まらないと次の工事ができないため、他の構法と比べて工期が長くなる点は注意が必要です。

緩やかな曲線を生かした意匠とざらりとした表面の仕上げが目を引く壁式RC造の平屋
緩やかな曲線を生かした意匠と、ざらりとした表面の仕上げが印象的な壁式RC造の平屋
コンクリートならではのクールな質感で人気のコンクリート打ち放し
シャープなラインがひときわ目を引く3階建てRC住宅。外壁は内外ともに断熱塗装を施し、そのほかはコンクリート打ちっぱなし仕上げとなっている
シャープなラインがひときわ目を引く3階建てRC住宅。外壁は内外ともに断熱塗装を施して断熱性を高めている


インテリアと同じように、外観も住み心地や家への愛着を決める大切な要素。同時に常に紫外線や風雨など外の環境にさらされながら住まいを守るという大事な機能も果たしています。のちのち後悔しないためにもそれぞれの素材の特性をきちんと把握し、デザイン性とともに機能性や耐久性、メンテナンス性まで考えて、慎重に選ぶことをおすすめします。

(文/Replan編集部)