室内空間の質を高める窓は進化している

窓の性能はどこまでよくなる?

こうしてサッシとガラス・開き方の「3点」を改善していくことで、熱ロスや隙間風をシャットアウトした開口部が可能となるのです(図14)。最近ではこうした快適で省エネな窓が入手しやすくなっているのですから、使わないのはもったいないことです。

図14 サッシ+ガラス+開き方の工夫で窓は暖かくなる
図14 サッシ+ガラス+開き方の工夫で窓は暖かくなる
ガラスは3重トリプルLow-E、サッシは木かフル樹脂、開き方は縦すべり出しやフィックスといった、現状最高レベルの開口部をサーモ画像で撮影したものです。表面温度が高く保たれ漏気も防がれており、快適な室内環境が実現できていることが分かります。

この後、窓はどこまで高性能になっていくのでしょう。ドイツでは、ガラスを4重にした「クアッド」も登場しており、Uw値も0.5を切るような機種が登場しています(図15)。ただ、さすがに非常に高価で重量もかさみます。当面はUw1.0程度の窓をしっかり使っていく、という方向が現実的でしょう。

図15 究極の窓、4重のクアッドガラス+樹脂サッシ
図15 究極の窓、4重のクアッドガラス+樹脂サッシ
ドイツでも最高レベルの断熱性を有する窓の例です。現実的にこの辺が限界でしょう。

高断熱の窓の普及の大きな阻害要因となっているのが、防火の規定です。特に樹脂サッシは熱で溶けやすいので、防火とするには金属部材を大量に入れておかねばならず断熱性が落ちてしまうのです。「延焼のおそれのある部分」にはなるべく窓をつけないなど、工夫が必要になってきます(図16)。

隣地境界線・道路中心線から、1階では3m以内、2階では5m以内の範囲が「延焼のおそれのある部分」となり、外壁の開口部には防火設備の設置が必要となります。

図16-1 樹脂サッシの大敵は防火規定
図16-2 樹脂サッシの大敵は防火規定(窓の構造と写真)
図16 樹脂サッシの大敵は防火規定
都市部の20%程度の住宅は、防火規定を満たさなければなりません。樹脂は断熱性には優れていますが火災時の高温には弱く、防火サッシとするには金属のスペーサーが多く必要となります。金属は熱橋となるため、防火窓の断熱性はかなり低くなってしまいます。

今後の展開はむしろ、開き方のほうにあるかもしれません。引き違いや縦すべり出し以外にも、開けやすさと気密性を両立させた新しい開け方が登場してきています。「ドレーキップ」や「ヘーベシーベ」などといった聞きなれない開け方も、今後普及していくのかもしれません(図17・18)。窓は性能だけではなく、使い勝手も大事。ぜひショールームや展示会に足を運んで、ご自分で使い方を試してみてください。

図17 ドイツで人気の「ドレーキップ」
図17 ドイツで人気の「ドレーキップ」
ドレーキップは、ドイツでもっとも普及している窓の方式です。普通に開くだけでなく、内側に傾けることで防犯しつつ換気が可能です。また多くのポイントでロックされるため、気密性が優れているのも大きな特徴です。
図18 究極の引き戸「ヘーベシーベ」
図18 究極の引き戸「ヘーベシーベ」
名前の由来はHebe(上がる)+Schiebe(引く)。一見ただの引き戸に見えますが、開ける時にはサッシが上がりスムースに動き、閉める時はサッシが沈み込んで気密を確保します。

選ぶのはアナタ。国にまかせてはおけません

これまで駆け足で、窓の歴史と性能、今後のトレンドについてお話ししてきました。ガラスやサッシ・開き方については概ね出揃っており、将来突然新しいものが登場しそう、という感じではなさそうです。後はどれを選ぶかです。

最近、国の方で建材トップランナー基準が策定され、窓についてもメーカーは高断熱なタイプに切り替えていく義務を負うことになりました。ただ残念ながら2022年までの目標水準は非常に低く、「アルミサッシ+1枚ガラスはやめましょう」程度にすぎません。

どうやら誰かにまかせておけば勝手によい窓が入っていた、というものではなさそうです。我々はどんな家に住みたいのか、どうそれを実現すべきなのか。それは我々一人ひとりが勉強して行動していくしかないのです。

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※次回のテーマは<断熱・気密はなぜ必要なのか?>です。

【バックナンバー】
vol.001/断熱・気密の次の注目ポイント!蓄熱大研究
vol.002/暖房の歴史と科学
vol.003/太陽エネルギー活用、そのファイナルアンサーは?
vol.004/「湯水のごとく」なんてとんでもない!給湯こそ省エネ・健康のカギ
vol.005/私たちの家のミライ
vol.006/窓の進化

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