冷たい空気では放射熱をごまかせない

室内表面が高温になると、体からの放熱の主要ルートの1つである放射が機能しなくなり、残りの対流だけを頼りに体を冷やさなければならなくなるため、非常に低温の空気が必要になり、ここで問題が発生します。

空気は冷やされるほど重くなる、という単純な物理原則があります。この冷たく重い空気は足元に沈みこんでいきますが、あいにく人体は足元の冷たさを不快に感じてしまいます。熱に弱い頭部は天井からの放射熱で暑いまま、寒さに弱い足元ばかりが冷やされてしまいます(図13)。これが冷房の不快の大きな原因なのです。

図13 冷たい空気では断熱不足をごまかせない
図13 冷たい空気では断熱不足をごまかせない
断熱不足により室内壁面の温度が高い場合には、人体からの放射による放熱がうまくいかず、これを無理に冷たい空気による「対流」放熱で冷やそうとすると、冷たい空気は重いので沈みこみ、足元ばかりが冷えることに。頭が熱いままなのに足元がむやみに冷えるのは、この「ムリヤリ冷房」が原因です

建物外皮の断熱の不足は、冬の寒さだけでなく、夏の暑さや不快の大きな原因になります。エアコンなどの設備だけでは解決できないのです。

究極の冷房の条件とは

それでは、快適で省エネな冷房を行うにはどうしたらよいのでしょうか。これまで述べてきた通り、まずは東・西面を中心とした日射遮蔽の徹底、そして屋根を中心として断熱をキチンと行うことです。そのうえで、エアコンを上手にレイアウトすることが肝心です。

最近では外皮の断熱・気密が改善され、各部屋がつながった開放的なプランが増えてきたこともあり、1台のエアコンで暖冷房を行うケースが増えています。家全体を1台のエアコンで賄うことができれば設備コストも低減でき、適度な負荷での運転となることで省エネ効果も期待できます。暖房に関しては床下エアコンによる1台空調が実現しつつありますが、冷房の方はよりハードルが高そうです。

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