ミスターZEH・小山氏に聞くZEH最前線(続き)

——ZEHよりさらに上のZEH+(プラス)が登場しましたね。
小山 ZEHに比べてZEH+はまず、外皮性能や省エネの性能要求が厳しくなっています。エコワークスでは、こうしたZEH+の条件はすでに全棟クリアしています。
太陽光発電が増えていく中で、発電した電気で系統に過剰な負担をかけることなく、自分の家で使うことが大事。なので、ZEH+では自家消費を推進しています。すでに電気自動車(EV)用の充電コンセントは標準設置にしましたし、電機メーカーと連携して高度エネマネシステムの導入にも取り組んでいます。

——EVや定置型蓄電池は?
小山 今あるガソリン車を慌ててEV(電気自動車)に買い換える必要はないと思います。次の買い替えのタイミングでリーズナブルな価格になったEVを購入すれば十分でしょう。EVはランニングコストがガソリンの5分の1ですから、非常にお得になります。
定置型蓄電池はPVの大容量化に伴い、今後は必要になってくると思います。FITの固定価格買取期間が10年たって終わった住宅では、今後導入が広がっていくでしょうね。

——家が快適でゼロエネにしておけば、家族みんなが幸せになりますよね。
小山 現在の生活が幸せになるのは当然ですが、実は未来の幸せにも繋がります。お子さんによい家を引き継げるということを忘れないでください。お子さんが後になって、「パパとママはあの時しっかり努力して、未来のエネルギーのことを考えた家を残してくれたんだ」と思ってくれたら素敵ですよね。お施主さんにはぜひ、自分だけでなくお子さんのことも考えた家づくりをしてもらいたいですね。

——小山さんはライフサイクルでのCO2マイナスを目指すLCCM住宅も手がけられていますよね。
小山 本気で日本をゼロエミッションにするためには、建物単体をゼロエネルギー化するZEHやZEH+では不十分です。日本では運輸や産業などの分野が大量のエネルギーを消費しCO2を出しています。住宅はむしろ、エネルギーを生み出す必要があるのです。
ZEHやZEH+を達成するのに必要な太陽光発電の容量は5kWくらい。私の会社ではさらに3〜4kWをプラスして、8〜9kWの容量をおすすめしています。これだけあれば、ZEHでは考慮されていない家電の消費電力をカバーした上で、お釣りがきます。つまりCO2排出量のマイナス、LCCM住宅が実現します。この余った電気でEVも十分賄えるので、家だけでなく生活全体のゼロエミッションが可能となるのです。
もちろん、LCCMはライフサイクルで考えるので、建設時のCO2も減らすことが大事です。木造は有利になりますし、地域の建材利用も促進されて地域活性化につながるでしょう。
今年度から来年度にかけて、国交省助成のサステナブル建築物等先導事業の中で、200棟のLCCM住宅が建設されます。こうして日本中、世界中の家が全てLCCMになれば、地球の未来も明るくなります。

——小山さんは地球温暖化に強い関心をお持ちですよね。
小山 10年ほど昔に地球温暖化に関するテレビ番組を一緒に見ていて、息子に言われたんです。「パパの時代はいいよね。好き勝手にエネルギー使ってぜいたくな生活しちゃって。僕たちの時代は大変なんだよ」。それを聞いて本当に目が覚めましたね。そこから地球の未来に向けて住宅には何ができるのか、ずっと取り組んできたのです。
2050年に私は85歳です。その時、日本や世界でサステナブル社会が実現したことを見届けるのが私の願いです。だから日々健康には気を使っていて、運動にも励んでいますよ(笑)。

—— 自分は2050年には75歳です。負けないように頑張りたいと思います(笑)。小山さんのようなすごい人が出てくるのですから、日本の住宅分野にも希望が持てる気がします。今日は本当にありがとうございました!

エコワークス株式会社 代表取締役社長
小山 貴史 おやま・たかし
1964年熊本県生まれ。1987年京都大学工学部卒業。2012年、地球温暖化防止活動で環境大臣表彰受賞(エコワークス株式会社として)。2015年、経済産業省「ZEHロードマップ検討委員会」委員。2016年、環境省「クールチョイス推進チーム」省エネ住宅WG委員、一般財団法人建築環境・省エネルギー機構「グリーン建築推進フォーラム」委員。2017年、一般社団法人ZEH推進協議会代表理事


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※次回のテーマは<夏の快適性をエリアで考える>です。

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vol.005/私たちの家のミライ
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vol.007/断熱・気密はなぜ必要なのか?
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vol.010/ゼロ・エネルギー住宅ZEHってすごい家?
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vol.017/採暖をもう一度科学する
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