プライベートな庭を楽しむ。取材先実例に学ぶ「コートハウス」の間取り集

公開日:2021.7.13 最終更新日時:2026.3.23

Replanが教える家づくりで参考にしたいアイデアの数々。

外で遊ぶ子どもたちをリビングやキッチンから見守る。お花や木々の四季の移ろいを感じる。周りの視線を気にせずにバーベキューを楽しむなど、「庭のある暮らし」は、戸建ての家づくりの憧れのひとつではないでしょうか。

リプランの取材先には、たとえ厳しい土地条件でも、設計的な工夫で庭や緑のある暮らしを上手に実現したコートハウスがいくつもあります。そこでここでは、さまざまなコートハウスの実例を間取りとともにご紹介します。

※掲載方法の都合上、図面の縮尺は一定ではありませんので、ご了承ください。

コートハウスって何?

コートハウスとは、建物や塀で囲まれた中庭(コート)のある住まいのこと。外からの視線を気にすることなく、部屋の中から庭の緑や青い空を楽しめるのが魅力です。中庭の位置や植栽、窓のレイアウトなどによって、室内に入ってくる光や風、見える景色をコントロールでき、庭の愛で方や楽しみ方が広がります。

「コートハウスのメリット・デメリット」については、こちらの記事をご覧ください。
https://www.replan.ne.jp/articles/44096/

厳選6実例!コートハウスの間取り集

Case.1
変形敷地の難点をクリアした
小さな中庭のある
住まい

新居の土地を探していたNさんご夫妻にとって、実家や夫婦それぞれの職場までのアクセスはとても大事。当初から緑豊かな郊外に住むことは諦めていました。利便性を優先して見つけた土地は、JR駅から程近い住宅地にある約40坪の台形の変形地。制限の多い敷地条件ではありますが、せめて小さくとも庭はほしいと思っていたといいます。

マットグレーのガルバリウム鋼板の外観が印象的なNさん宅。約40坪の敷地をいっぱいに使っている
マットグレーのガルバリウム鋼板の外観が印象的なNさん宅。約40坪の敷地をいっぱいに使っている

完成したのは、敷地の形状に合わせた斜めのラインが印象的な五角形の住まい。開口部がほとんどなく、閉ざした道路側からは、少しだけ中庭の緑がのぞきます。「つくり込まれたガーデンや庭園のような庭ではなく、雑木林のようなさりげなさが好きなんです」と話す奥さんの要望に応えて完成した小さなインナーガーデンは、静かでなじみよい佇まい。

間取りはこの庭の緑をあらゆる場所から楽しめるように、自然に視線が誘導される構成に。リビングには大きな窓と縁側のようなウッドデッキを設け、2階にも庭の木々がちらりとのぞく窓を設けました。そのおかげで約29坪の延床面積とは思えない、開放的で伸びやかな家となりました。限られた空間だからこそ生きる緑の風景を見事につくりあげた都市型のコートハウスです。

幅広のウッドデッキはどこか懐かしい縁側の雰囲気でソトとウチを繋ぐ。地面には風合いのよい札幌軟石の敷石を埋め込み、色数を絞っている
幅広のウッドデッキはどこか懐かしい縁側の雰囲気で外と内を繋ぐ。地面には風合いのよい札幌軟石の敷石を埋め込み、色数を絞っている
階段越しに庭を望むキッチンからの眺めは奥さんのお気に入り
子どものベッドからも、ちょうど伸びてきた庭の木々の緑が望める
子どものベッドからも、ちょうど伸びてきた庭の木々の緑が望める

Case.2
1階と
2階に複数の庭。
どこからでも緑を楽しめる家

住宅密集地に建ち、黒いガルバリウム鋼板の外観が目を引くこの住まいは、ビルトインガレージと住宅に組み込んだカーポートに1階の面積の約半分を使っています。そのうえ三方を住宅に囲まれた立地で、まとまった広さの快適な庭のスペースが取れない敷地条件の中、緑を室内に取り入れるために採用したのは、小さい庭を随所に配置するアイデアでした。

カーポート部分の壁には素通しの開口部を設け、光と風を取り込む仕組み。BBQなどもできる

まず玄関からLDKへの動線上には、カーポートの後ろ側に設えられた坪庭の緑が、地窓を通して自然と目に入ってきます。黒と天然木の美しいコントラストを強調したLDKには、裏庭(テラス)に向けて壁一面に大開口が設けられ、室内に季節の移ろいを伝えてくれます。

圧迫感が感じられないリビングの透かし階段で2階に上がると、フリースペースから玄関の吹き抜け越しに中庭(バルコニー)が見渡せます。この中庭は、和室からも見ることができます。また浴室にも窓を設けて、坪庭を眺めながら入浴を楽しめる設計に。もちろん目隠しされているので、周りの目は気になりません。室内に光や風、庭の景色をとり入れる工夫がいっぱいのプランニングで、都市部でも緑に親しむ暮らしを叶えました。

吹き抜けになっているおかげで明るい玄関ホール。廊下の突き当たりにある窓越しに庭の緑が見える
LDKに沿って設けられた壁一面の大きな窓の向こうには裏庭。テラスには長めの庇をつけ光を遮る工夫も
LDKに沿って設けられた壁一面の大きな窓の向こうには裏庭。テラスには長めの庇をつけ光を遮る工夫も
和室の障子を開けると、そこには広い縁側と中庭が広がる
和室の障子を開けると、そこには広い縁側と中庭が広がる
大きな窓越しの坪庭を眺めながらゆっくりと入浴が楽しめる
大きな窓越しの坪庭を眺めながらゆっくりと入浴が楽しめる

Case.3
塀のような外壁で視線をコントロール!
大きな庭のあるL字の平屋

真正面から見るとシンプルな長方形のNさん宅。しかし、裏手へ回ると庭までを外壁でぐるりと囲った独特なフォルムに驚かされます。この形は、隣地との関係性を考慮した末に導き出された形です。外からの視線を遮るフェンスを設置する必要があったため、機能を兼ねたことでコスト面でも有利でした。

道路や隣家に面した3方向は極力窓をなくして閉じることで、プライバシーに配慮したNさん宅
道路や隣家に面した3方向は極力窓をなくして閉じることで、プライバシーに配慮したNさん宅
外壁をそのまま延ばしたような塀で中庭を囲う設計が住まいに安心感を与える
外壁をそのまま延ばしたような塀で中庭を囲う設計が住まいに安心感を与える

寝室からLDK、子ども部屋、水まわりと、それぞれの居住空間がすべて中庭に面するように配置。大きな窓は、外と内のつながりを感じさせるとともに、家のどこにいても家族の気配がなんとなく伝わる住空間をつくり出しています。

広い中庭は、周囲を気にせずに外の空気を満喫できる家族の憩いの場。将来お子さんが大きくなったら、おうちキャンプやバーベキュー、プール遊びなどを楽しんでいく予定です。そして、屋内と中庭をつなぐ縁側は、深い軒の出が陽射しや雨も防いでくれるので、アウトドアリビングや作業スペースなど、部屋のように使うことも可能。家での楽しみ方の選択肢が広がる居心地のいい住まいとなりました。

家のほぼ中央に位置した対面キッチンからは、外も室内も一望できる。リビングにはダウンフロアを採用した
家のほぼ中央に位置した対面キッチンからは、外も室内も一望できる。リビングにはダウンフロアを採用した
多用途に使える縁側は床幅1.3mとゆとりの設計。垂木を現しにした深い庇に守られている
多用途に使える縁側は床幅1.3mとゆとりの設計。垂木を現しにした深い庇に守られている
中庭を囲む塀が空を大きく切り取って、住まいと中庭のプライベート感を高めている
中庭を囲む塀が空を大きく切り取って、住まいと中庭のプライベート感を高めている

Case.4
プライバシーと採光に配慮した
平屋感覚の2世帯コートハウス

青森県に建つこの住宅は、プライバシーの確保と豊かな採光を両立させた「平屋感覚」のコートハウスです。中庭をコの字型に囲む間取りを採用することで、親世帯と子世帯の住居を自然なかたちでゾーニング。外部からの視線をシャットアウトしつつ、住まいの中心から両世帯の生活空間に光と風を効率よく取り込みます。

ホワイトのガルバリウム鋼板とグレーの塗り壁、木目調のシャッターなど、異なる素材や色合いが調和し、表情豊かなファサードになっている。屋根には約7kWの太陽光発電パネルを搭載
ホワイトのガルバリウム鋼板とグレーの塗り壁、木目調のシャッターなど、異なる素材や色合いが調和した表情豊かなファサード。通り側は極力窓をなくした設計

二世帯で共有する中庭は、約30帖もの広さ。塗り壁、床のタイルもベージュにして統一感を演出しています。二世帯ともLDKの大きな窓は中庭に面しているので、往来するためのアプローチとしての役割も果たします。

共有の中庭が家族間の程よい距離感を生む装置として機能。積雪地特有の厳しい冬でも暖かく過ごせる高断熱・高気密性能を土台に、街なかでも周囲を気にせずのびやかに暮らせるプランニングの好例です。

植栽は植えず、多目的に使える家族の共用空間としている
植栽は植えず、多目的に使える家族の共用空間としている
中庭に面した子世帯のLDK
中庭に面した子世帯のLDK
こちらは親世帯のLDK。いずれも中庭に面した大きな窓の効果で、明るく気持ちがいい住空間に

Case.5
プライバシーと開放感を両立した
平屋のコートハウス

自然豊かな住宅街に立つDさんご家族の住まい。互い違いの片流れ屋根が目を引くこの家は、プライバシーの確保と圧倒的な開放感を両立させた、平屋のコートハウスです。

互い違いの片流れ屋根が印象的な外観の平屋
互い違いの片流れ屋根が印象的な外観の平屋

最大の特長は、周囲の視線を気にせず、カーテンなしで過ごせる広々としたLDK。ナラの無垢フローリングや木を設えた下がり天井など、自然素材の温もりに包まれた室内が、大開口を通じて中庭のウッドデッキとフラットに繋がります。内と外が一体化したこの空間は、光と風を存分に採り込み、実坪以上の広がりを感じさせてくれます。

外からの視線を遮りながら開放感のあるLDKを実現するための片流れ屋根&コートハウスのプランが、室内の快適性を高めてくれる
外からの視線を遮りながら開放感のあるLDKを実現するための片流れ屋根&コートハウスのプランが、室内の快適性を高めてくれる
リビング・ダイニングはもちろん、中庭まで見渡せる開放的なキッチンは、Dさん宅の司令塔
リビング・ダイニングはもちろん、中庭まで見渡せる開放的なキッチンは、Dさん宅の司令塔

また、暮らしやすさを追求し、水まわりとファミリークローゼットを回遊動線で集約。「洗う・干す・畳む・しまう」がスムーズに完結する機能的な配置を実現しました。「プロならではの判断と提案で理想が形になった」と笑顔を見せるご夫妻。お子様が家中を元気に走り回る、デザイン性と利便性が高次元で調和した、上質な住まいの好例です。

長いウッドデッキのある中庭は子どもたちの格好の遊び場。ガレージとは格子戸で出入りできる
長いウッドデッキのある中庭は子どもたちの格好の遊び場。ガレージとは格子戸で出入りできる
ユーティリティからはウッドデッキにも出られ、外干しもスムーズ。家事や身支度などをそれぞれの動作として見るのではなく、スタートからゴールまでを想定して、最適な動線で結ぶことが暮らしやすさに直結する
ユーティリティからはウッドデッキにも出られ、外干しもスムーズ。家事や身支度などをそれぞれの動作として見るのではなく、スタートからゴールまでを想定して、最適な動線で結ぶことが暮らしやすさに直結する

Case.6
カーテンなしで暮らせる
約33坪のコートハウス

プライバシーを重視した家づくりをしたい方に、ぜひ参考にしていただきたいコートハウスです。 ロの字型のレイアウトを採用しており、外観は開口部がほとんどないグレーのシンプルな塗り壁で囲まれています。

Kさん宅の夕景外観。中庭から漏れ出る照明の光が、外観を美しく照らす
Kさん宅の夕景外観。中庭から漏れ出る照明の光が、外観を美しく照らす

中庭部分は暗くなり過ぎないようにFIX窓を設けていますが、すりガラスのため外部からの視線は昼間も夜も気になりません。上空へ視線が抜けるようにしたことで、開放感もあります。カーテンが不要なため、窓まわりがスッキリしてシンプルなインテリアがより際立ちます。中庭の一角のみ植栽スペースを設け、外照明で幻想的な空間を演出している点も魅力的。

夜のLDKは間接照明や中庭のライトの演出で昼間とはまた趣の異なる落ち着いた雰囲気に
夜のLDKは間接照明や中庭のライトの演出で落ち着いた雰囲気に
「中庭に寝転がって空を眺めるのが至福」というご主人。夜には星空観賞を楽しむこともあるそう
「中庭に寝転がって空を眺めるのが至福」というKさん。夜には星空観賞を楽しむこともあるそう

安全な中庭は、愛犬を遊ばせるのにも適しています。また、アイランドキッチンを採用しており、中庭を眺めながら食事の準備ができます。おしゃれな空間で、毎日心からリラックスできるお住まいです。

美しく掃除もしやすいクリスタルカウンターのアイランドキッチン。中庭を眺めながら料理ができるのも魅力
美しく掃除もしやすいクリスタルカウンターのアイランドキッチン。中庭を眺めながら料理ができるのも魅力
人目を気にする必要がないプライベート感満載の中庭は、おうちキャンプやバーベキューはもちろん、愛犬の遊び場としても最適な空間
人目を気にする必要がないプライベート感満載の中庭は、おうちキャンプやバーベキューはもちろん、愛犬の遊び場としても最適な空間

 


住む場所の利便性を重視すると、庭に割けるスペースが減って優先順位が下がってしまいがちですが、住まいの中に庭をとり込むコートハウスは、開放感とプライベート感を同時に得る手段として有効です。工夫次第で、住まいの理想を諦めずに済むこともあります。特に自由設計の注文住宅では始めから無理だと思い込まず、まずは設計士さんに相談してみては?思いがけないアイデアが飛び出すかもしれませんよ。

(文/Replan編集部)

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