床下エアコン暖房の改良

エアコンの温風を床下に吹き出す方法は、FFストーブの床下暖房と同じですが、設置時の消防法の問題はありません。またエアコンのファンは強力で床下にしっかり温風を送り込みます。しかし、やはり基礎が邪魔をして、エアコンの吹き出し方向以外の方向にはあまり空気が流れない欠点がありました。

そこで私は、エアコンのファンが強力なことを利用して、エアコンのまわりをしっかり覆い、エアコンのファンの圧力が床下空間全体にかかるように設置してみました。この結果床下は室内より全体で圧力が高くなり、床ガラリからはどこにあっても、ガラリの面積に応じて均等に空気がでるようになったのです。

図3がこの方式の図解です。

図3 壁掛けエアコンによる床下暖房
温水暖房が普及していない、温暖地で始まった、壁掛けエアコンの温風を床下に吹き出す床下暖房。冬の外気温があまり低下しない地域では、エアコンの効率も良く、最近急速に普及し始めている

①FFストーブ、温水ボイラーなどの熱源器 ②自然ガラリ ③ファン付きガラリ ④遮熱板 ⑤温風ダクト

これでうまくいくようにはなったのですが、最近のエアコンは室温センサーがエアコン本体の下の方に取り付けられて、床下の温度を検知してエアコンが止まってしまうため、室温センサーを持つ有線リモコンが付けられる機種に限定されてしまうようです。そこで、今は壁掛けエアコンより若干高くなりますが、ダクト式エアコンを床下に設置する方法を推奨しています。

図4にこのダクト式エアコンを2階の床下に設置して、温風・冷風を1・2階に吹き出す方法をとり、非常に安価に全室暖冷房システムを実現する方法を示します。

図4 ダクトエアコンによるダクトレス床下冷暖房
エアコンによる床下暖房を改良し、2階の床下にダクトエアコンを設置し、ダクトを使わず床下に温風、冷風を直接吹き出し、暖冷房を可能にした新しい手法。熱交換換気もダクトエアコンと接続することができる

①FFストーブ、温水ボイラーなどの熱源器 ②自然ガラリ ③ファン付きガラリ ④遮熱板 ⑦熱交換換気機器

この方式は、冷房の空気を2階床から上に吹き出しても、冷たい空気は重いため2階全体が冷えなかったり、1階天井から暖房の温風を下向きに吹き出しても、温風は軽いため天井付近しか暖かくならなかったりしますが、ブースターファンを吹き出しガラリの一部に設置することで解決できています。また、熱交換換気システムをエアコンと連動させることにより、エアコン内部のカビの発生を抑制したり、夏の室内湿度をより低く抑えたりすることもできます。

温暖地では、このようにして安価に全室冷暖房システムが出来上がりました。これから広く普及していくと思っています。

床下暖房を高性能住宅で行うには
基礎の熱損失低減が重要

住宅の高性能化が進み、暖房機の出力も小さいもので済み、暖房時間も短くなってくると、暖房停止時に急速に床下の温度が低下するという問題が発生し始めました。基礎断熱が外周部だけで行われ、床下の土間コンクリート下面が断熱されていないことにより、床下地盤が十分暖まらないことによるものです。

北海道ではほとんどの住宅で、地盤改良のPC杭が通常の布基礎の下に施工されます。逆T型の布基礎は、土間コン下に断熱材を施工しても外周で熱橋ができ、熱がどうしても逃げてしまいます。そこで、基礎工法の改良に取り組み始めました。PC杭の上の基礎は逆T型にする必要がなく、RCの基礎梁がかかれば良いという考えから、図5のような基礎工法が出来上がりました。

図5 熱損失が小さくなる新しい基礎断熱工法
断熱型枠を採用し、図で分かるとおり基礎を自動的にすっぽりくるむように工夫した。北海道のように凍結深度の深い地域でも、浅い基礎で済むようにスカート断熱工法を改良、構造計算の考え方も地盤改良杭に荷重を伝え、杭で支える計算に改めて、鉄筋量もコンクリート量も削減した合理化工法

これについての詳細は別の機会に譲りますが、これで熱損失は大きく削減し、床下の温度が下がることもなくなり、基礎の施工も大幅に合理化されます。これから床下暖房を行う場合には、こうした工法が必須条件です。