住宅で使う照明には、さまざまな種類があります。特に最近の家づくりでは、いくつかのタイプの照明器具を組み合わせて、夜の時間を心地よく暮らせるよう明かりを計画するケースが増えています。

以前、「「あかりの色」から考える、リビング照明の基本」と題して、インテリアコーディネーターの本間純子さんに「リビングの明かりの色や見え方の特徴」について解説いただきましたが、今回は主に屋内で使われる照明器具について、その種類と特徴を解説してもらいましょう。


住宅でよく使われる「天井照明」

天井直付けの照明器具「シーリングライト」

天井直付けの「シーリングライト」は、日本の住宅の照明器具として一般的で、多くの人になじみ深い照明器具です。天井に付けた引っ掛けシーリングにカチッとはめて接続するタイプが主で、取り付けがしやすいのも特徴です。

器具の周囲から天井面をなめるように光が走るため、比較的均一な明かりを確保することができます。明るさ感を得やすい照明器具でもあります。

シンプルでオーソドックスなデザインのシーリングライト
部屋全体に均一な明かりを確保できるのが、シーリングライトの特徴
部屋全体に均一な明かりを確保できるのが、シーリングライトの特徴

天井に開けた穴から光を落とす「ダウンライト」

最近の家づくりではすっかり定番化した「ダウンライト」は、天井に開けた穴から光を落とす照明です。天井面がすっきりした印象になる一方で、「明るくない」という声をよく聞きます。手元の明るさは確保できても「明るさ感」が不足しがちなのです。

というのも、私たちは壁面や天井面からの「反射光」で明るさを感じているからで、空中を漂う光だけでは明るさは感じられません。ダウンライトを用いる場合は「どこに光を当てるか」をはっきりさせることがとても重要です。

ダウンライトを計画的に配置して、すっきりとしたLDK空間を実現
和室の天井のアールに沿ってダウンライトを配した例
和室の天井のアールに沿ってダウンライトを配した例
天井高が低い場所でも、すっきりとした空間に仕上げることができる

器具を天井から吊り下げる「ペンダントライト」

コードやワイヤーで器具を天井から吊り下げて使う「ペンダントライト」。ダイニングテーブルやキッチンカウンターなど、手元に十分な明かりが欲しいところによく使われます。

ダイニングのテーブルからは70㎝程、キッチンのカウンタートップからは80㎝程度離して吊り下げるのが一般的ですが、まぶしさや頭がぶつからないかを確認して、高さを決めましょう。

ペンダントライトはダイニングのテーブルからは70㎝程、キッチンのカウンタートップからは80㎝程度離して吊り下げるのが一般的
ペンダントライトはダイニングのテーブルからは70㎝程、キッチンのカウンタートップからは80㎝程度離して吊り下げるのが一般的

小型のペンダントライトはデザインが豊富で、最近は数個を組み合わせて配置するのが人気です。同じデザインの照明を並べるのも素敵ですが、異なるデザインや同じ形で色違いのランプシェードを組み合わせても楽しい雰囲気を演出できます。また、並べ方や高さに変化をつけると、空間の個性が増します。

なお、大きなサイズのペンダントライトは取り付け場所に要注意です。特にダイニングでの立ち座りのときや、通路付近の高さを考慮して取り付け位置を決めましょう。部屋の隅の低い位置にセットすると、フロアスタンドのような雰囲気になります。

大きなサイズのペンダントライトは取り付け場所を要確認
部屋の隅の低い位置にペンダントライトをセットすると、フロアスタンドのような明かり取りになる
部屋の隅の低い位置にペンダントライトをセットすると、フロアスタンドのような明かりとりになる

夜の室内を素敵に彩る「壁付け照明」

壁に付けて部屋を照らす「ブラケットライト」

壁面に付ける照明を「ブラケットライト」といいます。ブラケットライトは、床から2m 以上の高さに取り付けるのが一般的ですが、場所によっては光源が目に入ってまぶしく感じることがあるので、形や素材、光源の位置をよく検討して選びましょう。数個並べて配置するときは、光の重なり具合にも注意します。

壁面に付ける「ブラケットライト」
壁面に付ける「ブラケットライト」
まぶしさや光の重なりに注意して設置位置を検討

吹き抜け空間のブラケットライトは、壁面を光が走ることで、光のグラデーションの美しさと反射光から得られる照度で、一石二鳥の効果を狙えます。吹き抜けは天井が高く、電球交換が難しい空間です。長寿命のLED ならメンテナンススパンが長いので、負担が少なくてすむメリットもあります。

吹き抜け空間にもブラケットライトは効果的

暮らしに合わせて使いたい「置き型の照明」

電源がコンセントで自由度が高い
「フロアスタンド/テーブルスタンド」

「天井の明かりを絞って、手元に明かりを加える」「必要なところに必要な明かりを用いる」のが、今注目の明かりの使い方です。まんべんなく明るいよりも、少しメリハリのある明かりのほうが、心地よく感じられます。

そこで活躍するのが、 床に置くタイプの「フロアスタンド」やテーブルやカウンターの上などに置くタイプの「テーブルスタンド」です。専用の電気工事が不要で、近くにコンセントがあれば明かりを自由に配置できるのが魅力です。

手元に明かりを加えるフロアスタンド
シェードのデザインはインテリアのアクセントに
シェードのデザインはインテリアのアクセントに

アーム付きのテーブルスタンドはデスクまわりでおなじみですが、リビングや寝室向きの大きめなデザインのフロアスタンドもあります。欲しい位置に明かりを移動できるのは使い勝手がよく、快適ですね。

リビング照明としてデザイン的にも効果的な大きなフロアスタンドも

お気に入りの絵やオブジェを、アーム付きのテーブルスタンドやクリップ付きのスポットライトで照らすだけで、気軽に「お家ミュージアム」を楽しめます。テーブルスタンドの明かりを部屋に一つ加えるだけでも、室内が落ち着いたムードに様変わりします。照明の工夫で、普段の空間の新たな魅力を再発見してみませんか?

テーブルライトを置くだけで、窓辺がぐっと華やぐ

よりコンパクトで、よりスリムに
LED普及で照明デザインは多様化

キッチンと水周りは最短の動線で結ばれている。脱衣室は洗濯室も兼ね、大型の物干しスペースと収納棚を併設。衣類を脱ぐ、洗う、干す、仕舞うまで、1ヵ所で完結できる洗濯室は、長年共働きをしてきた奥さんがどうしても実現したかった家事スペースだった

今は照明器具のほとんどにLEDが使われています。「消費電力が少なくて長寿命」、「寒い冬もしっかり明るい」など、LED照明は白熱灯と蛍光灯の機能面のいいとこ取りの明かりです。

LEDは発光する部分が小さいことから、従来の電球(普通球、ボール球)や蛍光灯(直管形、環形)の形にとらわれない、コンパクトでスリムな器具デザインが可能になりました。また発光面がフラットな新しいタイプのLED電球や、Bluetoothで操作できる器具も出てきていて照明の機能性はどんどん進化し、空間の楽しみ方も広がっています。

選択肢が増えた今、照明の楽しみ方は人それぞれ。自由な発想で、自分やご家族に合った明るさや色を検討しながら、さまざまな明かりを組み合わせて楽しんでくださいね。