ZEH(ゼッチ)はゼロエネでもなければ 
省エネ住宅でもない

消費エネルギー計算プログラムが公開され、その翌年ぐらいから経産省主導でのZEHの補助金が始まりました。省エネ基準のレベルアップに消極的な国交省に対し、UA値を約20%程度切り上げたZEH基準をつくり、調理家電を除く消費エネルギーを太陽光発電でまかなう住宅を、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)と命名し、大きな補助金を付けたのです。これには国交省も同調せざるを得なく同じように補助金を付けました。

このような住宅は、多額の補助金のせいもあって広がりを見せ、そのおかげで太陽光発電のコストは随分安くなりました。その功績は大きいものがありますが、調理家電を除くゼロエネの計算には、私は反感を持ちました。実際はゼロエネルギー住宅ではないのです。それでも住宅の省エネ化が進むのなら悪くはないのですが、もう一つ大きな問題がありました。

それは、暖冷房エネルギーの計算が全室暖冷房でなくてもいいことです。図3からQ1.0住宅レベル1より性能の低いZEH基準住宅では大きな太陽光発電パネルを屋根に設置する必要がありますが、暖房方式を居室のみの間歇暖房として計算できるのです。図4にWEBプログラムで暖房方式によって暖房エネルギーがどれだけ少なくなるかを示します。

1GJ=278kWh 効率85%の灯油ボイラーで1GJ=灯油32ℓ
図4 WEBプログラムによる居室連続または間歇暖冷房の暖冷房エネルギー

省エネ基準住宅でも、QPEXで計算した全室暖房のエネルギーより小さくなります。ZEH基準住宅ではこれより若干少なくなりますから、図3のQ1.0住宅レベル1とほぼ同程度の計算が可能になります。それでも、屋根の上に設置可能な太陽光発電パネルには限りがありますから、寒冷地に対してはニアリーZEH基準なるものをつくり出し、消費エネルギーの75%の太陽光発電パネルでいいとしたのです。これはZEH補助金申請上の話で、実際はその住宅の居住者は全室暖房に近い生活をしますから、ゼロエネルギーからかけ離れたものになってしまいます。

図5では、図3と同じ計算をした3地域「盛岡」の例を、図6では6地域「岡山」の例を示します。

図5 全室暖冷房時の住宅の全消費エネルギー(図2と図3の合計)と創エネルギー(3地域:盛岡)
図6 全室暖冷房時の住宅の全消費エネルギー(図2と図3の合計)と創エネルギー(6地域:岡山)

岩見沢と同様に、盛岡、岡山はそれぞれの地域の代表都市です。盛岡では、消費エネルギーは10%くらい少なくなりますが、同じ太陽光発電パネル10kWhでの発電量が増えて、ゼロエネルギー住宅の実現は2地域よりはかなり容易になります。岡山は、Q1.0住宅レベル3では暖房エネルギーが極端に小さくなり、冷房エネルギーが増えてもトータルでかなり少なくなり、太陽光発電パネルの発電量も大きく、5kWhくらいのパネルを設置することで実現します。

太陽光発電での系統連携とオフグリッド

これまでの計算は、年間のトータルエネルギーで計算したものですが、実際の住宅では日射のない日が続くと太陽光発電量が足りなくなり、一日単位ではゼロエネルギーではなくなります。しかし、足りない日は電力会社から電力を購入し、余る日には電力会社に販売することで、年間ゼロエネルギーが実現します。これを系統連携といいます。電力会社と縁を切ってもゼロエネルギーを実現するためには日射のない日でも電力を使えるように、蓄電池が必要になります。こうして、電力会社に接続しないで自立した住宅を「オフグリッド」の住宅と呼んでいます。

オフグリッド住宅では、余裕を持った太陽光発電パネルと蓄電池が必要となります。余剰の程度はよく分かっていませんが、かなりのコストになることは明らかです。もともとの消費エネルギーを一段と少なくすることが求められます。暖房熱源に灯油や電気を使わず、バイオマスエネルギーでCO2排出を抑えたり、太陽熱給湯に雪が積もらないようにベランダの手すりなどに急勾配で取り付け、パネルの枚数を増やしたり、貯湯量を増やしたり、いろいろな工夫が必要になります。こうした住宅の研究開発を進める必要を痛感しています。

今現在、家づくりに取り組もうとなさっている方は、とりあえずは全予算を住宅の省エネ性能向上に充てることが大事だと思います。世界中で太陽光発電パネルと蓄電池の研究が進められています。近い将来、大激変があると思います。それからでも遅くはないのです。(この項続く)