家の要素として欠かせない「窓」。日常生活の中では何げなく開閉を行いながら、その種類や機能について深く考えるタイミングはあまりないでしょう。一方、家づくりを考え始めると、位置やサイズ、種類や機能など、窓についての検討事項は多岐にわたります。

「窓」の主な役割

住まいにおける窓は、家の内側と外側をつなぐ重要な役割を果たしています。住まいの中にいながら、外とつながりを感じて暮らすことは、日々の快適性に大きな影響を与えます。役割を正しく知り、どの窓にどの役割を与えるかを考えることで、住まいのかたちが見えてきます。

●光を通す

外部と空間を隔てながら、暮らしに必要な明るさを確保するために、採光は重要な窓の役割のひとつです。同時に太陽光の熱を室内に取り込み、温もりある暮らしを支える機能も兼ねています。冬でもしっかり日射を取り込むことで、暖房エネルギーを削減できます。

●風を通す

住宅に備えられている24時間換気は止めずにきちんと稼働させつつ、窓から上手に風を通すことで、室内にたまった匂いや湿気を屋外へ排出することができます。風の通る家であれば、時間帯によって開閉を工夫することで、夏でも冷房に頼り過ぎることなく快適に過ごせます。

●視線を通す

周囲の景色を取り込み、自然とのつながりのある空間にするためにも、窓は重要な役割を果たします。ロケーションの良さを生かすだけでなく、近所の公園の木や、敷地内に植えた庭木、空などを窓の配置やかたち、サイズを工夫し生かすことで、心地よい住空間をつくることができます。

設置場所による窓の違い

設置場所により、それぞれの窓に名前があります。覚えておくと、情報収集や打ち合わせのときに便利です。

【天窓(トップライト)】

建物の屋根部分に設けた窓。遮るものがない位置に設置されているため、陽の光をダイレクトに室内に取り込むことができる。取り付けられる位置は最上階に限られる

【高窓(ハイサイドライト)】

高い位置に設けた窓。周囲の視線を気にすることなく、光を取り込むことができる。低い位置の窓とセットで開閉できるタイプを採用することで、効率の良い換気を行うこともできる

【掃き出し窓】

窓の下部分が床まであり、外との出入りが可能な窓。バルコニーや庭に面して設置されることが多く、サイズも大きく眺望や開放感をもたらす効果もある

【腰高窓】

腰の高さに設置される窓のことで、一般的には床から90㎝程の位置に設けられる。椅子に座った状態で外が見渡せる。出入りすることはできないが、窓の下の壁面に棚や物を置いてスペースを有効活用できる

【地窓】

床面に近い位置に配置した窓。外からの視線を避けながら、床に座った状態で庭や景色を眺めるのに適している。対局に位置する窓と組み合わせて開閉することで、夏場は冷たい空気を室内に行き渡らせることもできる

窓の開き方の違い

窓の開き方の違いによっても、窓には固有の名称があります。


【FIX窓】
窓枠に固定されていて開閉機能のない窓。採光や眺望のために設けられる

【すべり出し窓】
窓枠の左右に設けられたレールに沿って上部の吊り元がスライドし、窓の下部を外側にすべり出させて開ける窓

【引き違い窓】
左右2枚のガラス戸をスライドして開閉する窓。左右どちらからも開くことができる

このほかにも、片開き窓、両開き窓、引っ込み窓、突き出し窓、上げ下げ窓など、さまざまな開き方の窓があり、空間や窓に持たせたい役割に応じてプランニングがなされます。代表的なものを知っておくと、間取り図やカタログの理解に役立ちます。

窓の素材と性能

窓の役割を十分に生かすためには、「サッシやガラスの性能」も重要なポイントです。 耐風性、水密性、気密性などの基本的な性能に加え、窓の断熱性や日射取得性など住まいの快適性に関わる性能が向上してきたことで、「室内の温熱環境を快適に保ちながら眺望を楽しむ大開口」といった暮らしの希望が実現できるようになりました。

ペアガラス・トリプルガラス  (複層ガラス)
2枚(ペア)のガラスまたは3枚(トリプル)のガラスの間に、空気層が設けられたガラスのこと。乾燥空気の空気層が断熱効果をもたらす。トリプルガラスはペアガラスよりも空気層が多く断熱性能も高くなるため、寒冷地で多く使用される
Low-Eガラス
ガラスの表面にLow-E膜と呼ばれる特殊な金属膜をコーティングしたガラスで、主に複層ガラスに用いられる。遮熱性が高く、太陽の熱や暖房で暖めた室内の熱を吸収・反射し、夏の暑さを和らげ、冬の暖房効率を高める
アルゴンガス・クリプトンガス
断熱性能を高めるために、複層ガラスの間に封入されるガス。空気よりも重く熱を伝えにくいため、断熱性・遮熱性が高まる
樹脂サッシ
塩化ビニル樹脂から成型されたサッシ枠に複層ガラスなどで構成された窓。断熱性能が高く、室内の温度差や結露を軽減することができる
木製サッシ
木の持つ温かみや素材感を生かした木製サッシは、外観上も美しくインテリア性も高い。断熱性も高く、結露が起こりにくいというメリットもある

窓の役割や種類の違いを知った上で、さらに重要になってくるのは「窓の役割を生かす設計」です。 それぞれの窓のメリットやデメリットをふまえた上で、敷地条件や暮らしの要望、 予算に合わせた窓を計画できるのが注文住宅の大きな魅力。家にいる時間が多くなった今、窓と暮らしの関係についてもぜひ考えてみてくださいね。

(文/Replan編集部)

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