融通が利きやすく、内外装のデザインをオーダーメイドしやすい注文住宅。中でもその醍醐味は「造作家具」です。

「造作家具」とは、建てる家の間取りや自分たちの使い勝手、ライフスタイルや家に合わせて造り付けた家具や棚の総称。適材適所に組み込むことでデザイン的にも機能的にも満足度の高い家づくりにつながります。

そこで今回は、リプランの取材先で見つけたオリジナリティーあふれる「造作」のアイデアの数々をご紹介します!


造作家具の魅力・メリットとは?

造作家具には、いくつかの魅力やメリットがあります。

1. ほしい場所にぴったりのサイズの棚や家具がつくれる

微妙な寸法のデッドスペースができると、そこに合う市販の家具を見つけるのは至難の業ですし、隙間ができると見栄えが悪く掃除も面倒です。ちょっと空いた空間を有効利用できて、しかもきれいに収まる。これは、造作の大きなメリットです。

2. インテリアに統一感を持たせられる

せっかく床や壁などの仕上げにこだわっても、そこに合わせる家具の素材感や色のトーンが違うと、部屋全体の印象がバラけてしまいます。内装仕上げの素材やデザインと統一感を持たせてコーディネートできるのも、造作家具の魅力です。

3. 家のかたちや設計に合わせられる

敷地条件や建て方によっては、必ずしも四角い家になるとも限りません。90度ではない角ができると、既製品の家具や棚を置くのが難しいケースもあるでしょう。その点、造作なら、不規則な形状の壁に沿うように、家具や棚をつくり付けることができます。

造作家具を取り入れる際の注意点

魅力やメリットの一方で、注意しておきたいポイントも把握しておきましょう。

1. 造作の分、コストがかかる

造作家具は、その場所に合わせてつくってもらうため、その分工賃や材料費が発生します。会社によって大工さんが施工できる範囲は異なりますし、よりデザイン性や意匠性を重視した造作家具は、家具職人さんや家具製作会社へ依頼することになります。費用も、依頼先や作業内容、仕様などによって変動します。造作家具を採用するかどうかは、自分たちにとっての重要度とコストのバランスを見て判断する必要があります。

2. 造作したら、動かせない

家につくり付けた家具は、簡単に移動できません。家族構成やライフスタイルの変化で、物の置き場所や空間の使い方が変わっていくこともありますので、場所によって造作がいいのか、置き家具にしておくのがいいのかを検討することも大事です。

造作するか、置き家具にするかは先々まで考えて検討

注文住宅で実現!造作家具のアイデア13選

idea①
オーダーキッチンに組み込んだ
伸縮できるダイニングテーブル

この家のキッチンは、家族や友人たちが集って食卓を囲むことが多いという住まい手のライフスタイルに合わせて製作されたオーダーメイド。天板はステンレス製、下部の収納部分は木製で、ダイニング側にも棚を造作しました。

注目は、アイランドの中央部分。シチュエーションに合わせて女性1人でも簡単に伸縮できるダイニングテーブルが組み込まれています。普段はコンパクトに、来客時は広げて空間を自在に使うことができます。

Idea②
キッチンの隠れワークスペース

限られた空間の有効利用のポイントは「機能を兼ねる」こと。その点で造作は大活躍。キッチン背面収納に組み込まれ、普段は天板の一部になっている可動式の収納ボックスを取り外すと、小さなワークスペースが出現します。省スペースで、ちょっとした家事やPC作業に重宝しそうですね。

▼キッチンの造作アイデアが気になる方は、こちらも併せてご覧ください!
自由なデザインで料理をもっと楽しく! キッチンの造作アイデア6事例

idea③
造作家具でLDK空間をコーディネート

キッチン、TVボード、ソファ背面のワークスペースをチェリー材を用いて造作したことで、素材もデザインも統一感のある上質なLDK空間に。キッチンのダイニング側の収納は上部2段を引き出しやティッシュケース、下を開き戸にして、より家族が使いやすい仕様になっています。

idea④
コンクリート造のキッチンやベンチ

「家族が集いやすいように」と75㎝掘り下げたLDKは、キッチンカウンターやリビング・ダイニングのベンチまでコンクリートで建物の基礎と一体型に。色や素材感が、奥さんが希望したステンレス製の業務用キッチンや、造作の洗面台ともよくなじんで、この家ならではの雰囲気をつくり出しています。

「家族が集いやすいように」と75㎝掘り下げたLDKは、キッチンカウンターやリビング・ダイニングのベンチまでコンクリートで建物の基礎と一体成型に

idea⑤
室内の随所に散りばめた
壁面いっぱいの見せる収納+階段下の書斎

「出し入れのしやすさ」「デッドスペースの活用」「お気に入りのディスプレイ」。この3つの目的を兼ね備えるのが壁面いっぱいの造作収納です。ファッションアイテムが豊富なこのお宅では、靴も衣類もオープンな造作棚に収納し、洗面室や階段脇の壁面にもスペースに合わせた棚をつくり付けています。

また階段下のデッドスペースは、掘りごたつ式のワークスペースとして活用。適度なこもり感が心地よい空間です。

階段下のデッドスペースは、掘りごたつ式のワークスペースとして活用

idea⑥
細かい寸法までフルオーダーした
こだわりの収納

自分たちの持ち物や使い勝手に合わせて収納をつくれるのも、造作の大きな魅力です。このお住まいでは、奥さんがどこに何をどのくらい収納するかを決め、棚の高さや奥行きなどの寸法を細かく指定。すべてがぴったりのサイズで収納されています。

ファミリークローゼットは、ハンガーパイプの奥に20㎝幅の棚を造作してデッドスペースを有効利用。帽子や小物を入れた箱が置けて機能的です。

ファミリークローゼットは、ハンガーパイプの奥に20㎝幅の棚を造作してデッドスペースを有効利用。帽子や小物を入れた箱が置けて機能的

idea⑦
高さを生かした大容量の図書コーナー

本好きにはたまらない大容量の図書コーナーも、本棚を造作することで、間取り的な制限の範囲内で空間を最大限に活用してつくることができます。天井いっぱいまでの高さがある親子共用の図書コーナーは、数あるアンティークの品や家具になじむ塗装仕上げに。本棚の一部を書斎への隠し扉にする遊び心も、自由度が高い造作ならではです。

idea⑧
六角形の家のかたちにフィットさせた
キッチンと洗面台

こちらのお住まいは、敷地が扇型で、家のかたちは六角形。そのため家の角に配したキッチンや洗面脱衣室も不規則な形状ですが、作業台やカウンターを造作したことで、空間に沿ってすっきりフィットし美しく収まっています。

借景が美しい窓辺の高さにぴったりの本箱付きベンチシートも、この位置にサイズを合わせてつくった造作家具です。

idea⑨
リノベーションのプランに合わせた造作

リノベーションを機に、暖房を薪ストーブ1台で賄うことにしたこのお宅では、熱を家全体にまんべんなく行き渡らせるために、間取りに合わせて天井との間を空けた間仕切り壁を施工。その壁に収納や家具の役割を付加することで、住まい手のライフスタイルや家の使い方に寄り添った機能を実現しています。

熱を家全体にまんべんなく行き渡らせるために、間取りに合わせて天井との間を空けた間仕切り壁を施工

間仕切り壁に収納や家具の役割を付加することで、住まい手のライフスタイルや家の使い方に寄り添った機能を実現

idea⑩
階段下のデッドスペースを生かした造作棚。
エアコンの目隠しも

デッドスペースになりがちな階段下に収納棚を造作する例も、リプランの取材先ではよく見られます。このお宅では、階段下に階段状の造作棚を設け、主に奥さんが好きな猫と骨董のコレクションをディスプレイ。エアコンの目隠し用ルーバー扉も造作です。空間に統一感が生まれますね。

idea⑪
壁面を利用したお仏壇

最近は仏間を設ける家が減っています。とはいえ、お仏壇を置く場所が必要なご家庭も多いはず。例えばこのお宅のように間仕切り壁の厚みを利用して、ニッチのように小さなお仏壇を造作すれば、専用の部屋を設けずに仏様やご先祖様をお祀りする場所をつくることができます。観音扉や内部の棚も造作です。

idea⑫
ダイニングのコーナーソファ

ダイニングセットは、テーブルとチェア数脚をまとめて購入し、設置するのが一般的ですが、配置によっては造作するのも一つのアイデア。こちらのお宅では、ダイニングの広さと形状、コーナー窓の高さに合わせてコーナーソファを造作しました。色もデザインも空間に合わせてオーダーメイドした家具なので、LDKのインテリアに自然になじみます。

idea⑬
猫部屋のキャットウォーク

猫と暮らすための住まいでは、キャットウォークを造作するケースもよく見られます。このお宅では、リビングの隣に猫とフェレット専用の小部屋を配し、その中に大小さまざまなキャットウォークを造作。中央の柱には麻紐を巻き付けて爪とぎができる仕様に。麻紐がボロボロになったら、必要な部分だけ交換可能です。猫型にくり抜いたボックスも造作。遊びゴコロが感じられますね。


このように見比べると、それぞれのお住まいの条件やライフスタイルによって、造作家具のアイデアや方法は無数にあることが分かります。自分たちの住まいや暮らしに本当に必要な機能を吟味して、より良い住環境につながる造作をぜひ取り入れてみてください。

(文/Replan編集部)

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