vol.47 将来の気候と災害に備えよう
将来の気候変動に備えた安全な家を建てよう
将来に備えた安心の家づくり(図7)の第一歩は、まずは自然災害の少ない安心の土地を見つけること。

そのうえで、将来も人口や経済が安定していて、社会インフラも維持される見通しがある地域を選ぶべきでしょう。家だけが立派に建っていても、周辺が衰退してしまったら住み続けることは困難だからです。
将来も安心な良い土地が手に入ったら、次は家づくり。猛暑でも健康・快適に暮らすためには、断熱や日射遮蔽といった建物外皮の強化は必須です。ただし気温が急上昇する中、寒冷地といえど通風でしのぐことはできません。家の中を涼しく保つ冷房計画が不可欠となります。その冷房に必要となる電気を賄うためには、太陽光発電の屋根載せが有効なことは、本連載でも繰り返し述べたとおりです。
冷房に備えた気密と防露 大雨・強風にも備えを
猛暑化する中、「暑さが我慢できなくなったら冷房をつける」という従来の使い方では、健康・快適に過ごすことはできません。住宅全体を24時間冷やす全館連続冷房が基本となります。
このように屋外側が高温・高湿な中、室内側が常時低温に保たれていると、外から流入する空気の湿気が壁体内で結露する「夏型結露」が発生するリスクが高まります。従来の結露対策は、屋外側が低温、室内側が高温・多湿な場合に発生する「冬型結露」だけを想定していたものでした。今後は全館連続冷房をした際に屋外側が高温・多湿で、屋内側が低温となる場合に発生する夏型結露への対応も必要になっていくでしょう。
さらに大雨や強風の際には、建物外部に吹き付けられた雨水が壁体内に侵入しやすくなります。壁体内結露や雨水侵入により壁体内が湿った状態になると、木材は腐りやすくなり、建物の寿命が短くなってしまいます。夏も冬も結露が起きにくいよう壁体構成を見直すとともに、外壁に雨がかかりにくく強風にも耐えられる、屋根や軒庇などの形状にも工夫が必要となるのです。
冷房と太陽光発電は最高の名コンビ
寒冷地でも夏は冷房が必須の時代ですが、はたして冷房に必要な電気は足りるのでしょうか。ちょっと前までは、夏になると電力会社が「エアコンの利用を控えましょう」「設定温度を上げましょう」と節電キャンペーンを連日繰り広げていましたから、電力の不足が心配になるのも無理はありません。
図8に、先の7月24日における全国の電力供給量と電力供給力の時刻推移を示しました。

冷房使用により昼間に電力需要は大きなピークを迎えていますが、増加分の大半は太陽光発電で賄えていることが分かります。
電力会社が節電キャンペーンを最近しなくなったのは、太陽光発電のおかげで電力供給量に十分に余裕ができたから。夏の昼間に必要になる冷房と、晴れた昼間にバリバリ発電する太陽光発電は、最高の名コンビなのです。このグラフには、屋根載せ太陽光発電の電気を自分で使った自家消費量はカウントされていませんから、太陽光発電の本当の貢献量はさらに大きくなります。
将来に備えた家づくり 決めるのは自分自身
温暖化懐疑論と同様に、太陽光発電についてもヘイトといわざるを得ない非合理な発言がインターネットにまん延しています。それらは太陽光発電のデメリットばかりを強調し、大きなメリットを完全に無視したアンバランスで無責任なものです。
筆者が思い返してみると、ほんの10年前まで「冷房の我慢こそ一番のエコ」という意見が、特に住宅設計者の間では大半でした。そうした「通風ありき」の人たちが、現在の猛暑化に直面して何か反省したという話は、筆者は寡聞にして聞いたことがありません。
世の中に流布されている意見は、最新の知見に基づいた合理的なものばかりとは限りません。家づくりの選択の結果を受け止めるのは、その家に暮らす人たち本人です。あなたが暑さや電気代にずっと苦しむことになっても、他人は絶対に責任をとってはくれないのです。
今回は、夏の猛暑化と自然災害の激化に備えた家づくりについて考えてみました。冷房と太陽光発電といった家単位での必須項目はもちろん重要ですが、結露や雨じまいへの配慮、そしてなにより洪水や高潮などの災害に備えた土地選びが重要です。よく調べて先を見通して考えて、自分自身の暮らしや先々も守れる家づくりを実現してくださいね。
連載「いごこちの科学 NEXT ハウス」バックナンバーはこちら。
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