家は建ててからも気をつけることがたくさんあります。「建てたら安心?知っておきたい、住宅メンテナンスの心得」でもお伝えしたように、せっかくつくったわが家をより長く快適に保つには、暮らしはじめてからのメンテナンスが必須となります。
ここでは、これから家を建てる方にも、すでに家を建てた方にも共通して知っておきたいメンテナンスの用語のうち、「瑕疵(かし)」と「経年劣化」の意味や違いについて、一緒に確認していきましょう。
メンテナンス用語その1
そもそも「瑕疵(かし)」の意味って何?
「瑕疵」とは、法律上何らかの欠陥があることを意味し、通常なら備わっているはずの、機能や品質、性能、状態が、つくり手のミスや手抜きなどによって備わっていない状況をいいます。
平成12年4月1日から「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が施行され、新築住宅に10年間の保証が設けられました。保証されるのは「構造耐力上主要な部分(土台、柱、梁、基礎など)」と「雨水の浸入を防止する部分(屋根、外壁)」についてで、これらに瑕疵が見つかった場合には住宅事業者が無料で補修を行わなければなりません。これを「瑕疵担保責任」といいます。

しかし品確法の施行後、住宅事業者が倒産などで補修責任を果たせない事件が多く生じたため、平成21年10月1日に「住宅瑕疵担保履行法」が施行され、住宅事業者に対して保険に加入したり、保証金を預けておくなど補修費用を確保することが義務づけられました。住宅事業者がその責任を果たさない場合は、各地域(主に弁護士会)に設置された住宅紛争審査会に申請(1万円の申請手数料が必要)すれば、紛争処理(調停・斡旋・仲裁)を実行できます。
なお、この義務化された瑕疵担保責任と一般的な瑕疵責任は区別されています。瑕疵担保責任では、「構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分」についてだけ業者に補修の責任があると明確化しました。つまりそれ以外については、法制化されていないのです。たとえばギシギシと床鳴りがする、建て付けが悪い、内装仕上げの拙さ、電気関連設備や給排水設備の不具合などは瑕疵担保責任の対象外となるため、施工業者などに直接交渉する必要があります。
また、雨漏りによく似た例として、生活空間から出た水蒸気が屋根面で結露して水滴となって落ちてくるケースがありますが、これは瑕疵担保責任の範囲となりません。しかし生活空間からの湿気を上昇させない防湿シートの施工をしていなかったり施工が完璧でなかったなどの要因が考えられるので、こちらも施工業者との交渉が必要となります。
メンテナンス用語その2
時間が経てば現れる!「経年劣化」
瑕疵と経年劣化は意味が異なります。経年劣化とは、時間や年数が経過するうちに品質や性能が劣化していく状態です。たとえば、住宅の外装に使われるサイディングが紫外線の影響を受けて色褪せたりするのは典型的な経年劣化です。その一方で、経年変化が独特の味わいとなって風合いが深まることもある無垢の木材などは、経年劣化とは見なされません。

住宅内では、居住者が生活することで内装建材、建具、家財、器材、設備品などに傷みが生じることはどうしても避けられません。生活空間で人が接する場所に関しては、消耗品的な要素があるということを意識したいものです。設備関連の備品などは、経年劣化というスパンでなく時間単位の「経時劣化」で機能や性能が劣化する場合もあるので、より細かなメンテナンスの配慮が必要です。

瑕疵と経年劣化の対策
不具合が発生したらどうする?

どのようなものにも経年変化があるからこそ大切なのが、定期的なメンテナンス。基礎にヒビが入っていないか点検したり、外壁の塗装やコーキングの打ち直しをしたりなど、自分でも点検を行い、気になる箇所が見つかった場合には施工業者と連携しながら対処していきましょう。
そのほか、台風や暴風雨、豪雪など自然災害による傷みや不具合は、施工業者に直接責任を求めるのは困難な事象。このような自然災害に備えて災害保険などに加盟しておくことも必要です。
また、瑕疵担保責任で明確化された「構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分」に不具合が発生した場合は、まずその住宅を施工した工務店や購入した販売業者などに連絡します。顔見知りの業者がいても、基本は購入資金を支払った業者への告知から始めます。順序を間違えると瑕疵保険の適用を受けられなくなる場合もあるので注意が必要です。
もちろん瑕疵担保責任の対象・対象外にかかわらず、不具合の補修において施主と施工者の連携は不可欠ですから、お互いに信頼できるような関係を常日頃から築き上げていくことがとても大切です。つまり、施工者や設計者を選ぶときには、家を建てた後も末長く信頼関係が保てる相手かどうかが、大切な基準になるといえそうです。
長く安心して住むことのできる家を持つには、新築を依頼するときの業者のアフターメンテナンスや施工の腕や実績にも注目したいものです。また、いざ瑕疵や経年劣化による不具合が分かったときに、しっかりと対応してくれる専門家であることも、事前に調べておくと安心ですね。
(文/Replan編集部)