普及するかに見えたブロック住宅

木造の高断熱住宅に比べて色々なメリットを持つ新しいブロック住宅に、北海道も支援してモデル住宅が公開されました。私はその設計チームのチーフを務め、三角屋根で外断熱サイディング外装タイプとブロック2重積み総地下の3階建てタイプ(写真3)を建設したのです。設計してみて私はブロック剥き出しのインテリアは好ききらいが大きいだろうということと、ブロック2重積みの外側にはアメリカで使われているような化粧ブロックが欲しいと感じました。三角屋根タイプでは外装に木材を使いたかったのですが、当時は法規上無理で、現在では可能になっています。

3. 北海道建材ブロック協会(現 北海道建築技術協会) モデル住宅(設計:鎌田紀彦、染谷哲行)
3. 北海道建材ブロック協会(現 北海道建築技術協会) モデル住宅(設計:鎌田紀彦、染谷哲行)

その化粧ブロックを使った住宅も、TAU設計の藤島喬君の手で提案されましたが、コストが高いことと断熱厚を厚くできないことから普及には至りませんでした(写真4)。

4. 化粧ブロック2重積みの家(設計:藤島喬)
4. 化粧ブロック2重積みの家(設計:藤島喬)

写真5は私が設計した、型枠ブロックを使った住宅です。型枠ブロックを使えばRC造と同等の構造強度が実現します。私の研究室では、なんとかブロック積みの施工性を上げてコストを下げ、北海道をはじめとする寒冷地の住宅としてメリットの大きいブロック住宅の普及を目指したのですが、ブロック業界も既に体力がなく実現には至りませんでした。

5. 型枠コンクリートブロックの家(設計:鎌田紀彦)
5. 型枠コンクリートブロックの家(設計:鎌田紀彦)

最後の写真6は、私が室蘭で30年暮らした家です。平屋30坪の公社プランのブロック住宅でしたが、20年前に外断熱に改修し、三角屋根の2階を増築しました。1階床は土間コンクリートとし、配管をコンクリートに埋設する床暖房です。とても快適に20年間過ごしましたが、特筆すべきは夏の涼しさです。室蘭の暑さはそれほどでもないのですが、ブロック造の1階はまるでエアコンが入っているように涼しく過ごせました。

6. 室蘭 鎌田自邸(ブロック造に三角屋根増築)
6. 室蘭 鎌田自邸(ブロック造に三角屋根増築)

Q1.0住宅には、ブロック住宅が大きな効果を生む

私はQ1.0住宅のような高性能木造住宅を提案していますが、冬のオーバーヒート対策と冷房負荷削減には住宅の熱容量を増やす必要があることがわかっています。その面で北海道ではブロック住宅が最適です。木造住宅でも間仕切り壁にブロックを使えないかを色々考えています。本州では同じく土塗り壁の家が大きな熱容量を持っています。北海道の郷愁であるブロック住宅と本州の伝統的な土塗り壁住宅が、最新の技術によるパッシブ省エネ住宅として、まさに今最新の研究対象なのです。