ヒートポンプでパワーアップ

元々、電気は大変利便性の高い「最高」のエネルギーです。スイッチひとつで簡単に入り切りできて空気も汚さず、光や熱だけでなく動力や制御にも自在に活用できます。ただし、電気はガスや灯油に比べて供給能力の上限が低く、「パワー不足」が大きな悩みでした。特に住宅では給湯・暖房などの熱需要が多いのですが、電気をそのまま熱に変えてしまうヒーターは非力であり、エネルギー効率も非常に低いことが弱点でした。

エアコンやエコキュートは、ヒートポンプにより空気の熱を集めることで、少しの電気で大量の熱を生み出すことができます。オール電化が進んだ背景には、ヒートポンプによる「パワーアップ」があったのです。

図2に、1970年以降の住宅におけるエネルギー種類の内訳(1住戸あたり年間・2次エネ基準)を示します。灯油やガスが伸び悩む中で、電気は増え続けています。全エネルギー供給に占める電気の割合は、1970年の18.8%から2010年には45.4%までと、3倍以上に増加しています。1住戸あたりの年間エネルギー消費量自体は、1970年の26.6GJから2010年の44.6GJと7割程度の増加にとどまっています。前述の電灯需要の急激な増大は、エネルギー全体に占める電気の割合の増加が大きな要因なのです。

図2 住宅のエネルギーに占める電気の割合は急増
住宅のエネルギー全体に占める電気の割合は一貫して増加してきています。最近では価格が不安定な灯油やLPGが減少し、住宅のエネルギーの約半分は電気によって賄われるようになってきています。従来の電灯から、冷房・給湯・暖房・調理まで、電気は全てをカバーするようになったのです。
出典:住環境計画研究所 家庭用エネルギーハンドブック2014

2010年、電灯需要は1951年の50倍に

こうした生活水準の向上と合わせて、住宅の全用途にわたる電化の推進に伴い、住宅での電灯電気の需要は戦後一貫して増加し続けてきました。2010年にはついに3042.3億kWhに達し、3000億kWhの大台を突破します。1951年の60.6億kWhから、実に50倍にも増大したのです。電気の発展が日本人の生活水準を向上させ、日々の暮らしの隅々まで支えるようになったのです。松永安左エ門が見たら、さぞかし感嘆することでしょう。

ただし、その後の経済不況、そして2011年の震災以降、電灯需要は減少しました。直近の2014年には2731.0億kWhと、2010年から1割近く減少しています。今後、電力需要は回復するのか減少し続けるのか、それは筆者には分かりません。しかし、電気という最も便利なエネルギー媒体が、住宅のエネルギーの中心としてさらに重要になっていくことは間違いないと思われます。

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