「Q1.0住宅のプロトタイプデザイン3」(2/2)

堀部マジックの4間×4間プラン

2.5間×6間プランの作業の次に別なパターンに取りかかろうとしているところですが、間口5~5.5間の敷地に対して、30坪前後の総2階建てプランとしては、3間×5間、3.5間×4.5間、4間×4間が考えられます。これらのパターンはもはや建物の横に車1台分のスペースは取れず、これを敷地の道路側に取ると、建物は道路から約3.5間下がる必要があります。これで庭をできるだけ広く残そうとすると、建物の奥行きをできるだけ小さくするほうが有利です。したがって、次のターゲットは4間×4間となり、連載第9回で紹介した、堀部さんのヴァンガードハウス(神戸里山博)が格好のモデルとなります。

4間間口を1.25間と2.75間に分割し、1.25間には1階にキッチン、トイレ、収納など、2階にはサニタリー家事室をぜいたくに配置し、2.75間には1階にダイニングスペースとリビングをゆったりと取り、2階には寝室、子ども部屋を比較的コンパクトに取ったプランです。私は実はこの住宅を見てはいないのですが、図面や写真を見ると、とても32坪のコンパクト住宅とは感じられない。まさに堀部マジックなのです(下図3参照)。ただ、2階への階段が出っ張っているために間口の狭い土地に配置することはできません。

図3 神戸里山博 in KOBEのヴァンガードハウス(設計:堀部安嗣)
図3 神戸里山博 in KOBEのヴァンガードハウス(設計:堀部安嗣)

先日の対談で、ハウスメーカーや工務店のモデルハウスを堀部さんが設計すると、それのコピー建築がはびこることになるが、建築家としてどう思うかと私が聞いたのですが、堀部さんは「自分の考えたことをベースにしながら発展する可能性もある。そういうものを見てみたいという気持ちもある」と発言され、随分寛容だと感じました。その言葉に甘えて、階段室の出っ張りをなくしてみたプランが図4です。

図4 ヴァンガードハウスを勝手に修正
図4 ヴァンガードハウスを勝手に修正

ちょっと変えただけですが、少しまぬけなプランになってしまいました。玄関ダイニングの土間との段差はなくし、ダイニングの窓を小さくしてしまいました。ダイニングの北窓はやはり一杯に大きいほうが良いようです。ダイニングとリビングの間仕切りとなっている家具は、段差がないと置きにくくまだ書いてありません。これを基にもう少し考えて堀部さんに見ていただきたいなと思っています。

堀部マジック第2弾

九州・福岡の住宅展示場内に地場の斉藤工務店のモデルハウスとして、堀部さんの4間×4間プラン第2弾が完成して、2017年11月初めに見せていただきました。実は、このモデルハウスで堀部さんには初めてお目にかかりました。空間的には土間のリビングと広大なダイニングスペース、ヴァンガードハウスとは逆に、こぢんまりとしたリビングが一段低くなり落ち着きのある空間に感じられました。

図5 斉藤工務店(福岡) fcaモデルハウス(設計:堀部安嗣)
図5 斉藤工務店(福岡) fcaモデルハウス(設計:堀部安嗣)

このプランの特徴はなんと言っても螺旋階段です。玄関、リビング、キッチン、ダイニングの交点に存在し、2階ではホール、サニタリーの中央となり、階段まわりが見事に動線となり、廊下がほとんどなくなってしまっています。螺旋階段が見事にこれを実現しています。2階に大きな家具を搬入するには窓から入れるしかありませんが、それでもこのプランはなかなか魅力的だと思います。私は、この空間を一瞥しただけで、窓の外に吊るされたアルミのすだれに夢中になってしまい、あとで堀部さんから、一番自慢の部分をろくに見ないと、あきれられてしまいました。

堀部さんは対談で、「高断熱に取り組むと自由度が奪われてしまうという先入観があった。実際には、設計時の北側にはリビングを設けないとか、いろいろな居室の配置の縛りがあったのだが、断熱を高めることによって温度ムラがなくなり、動線も自由自在に扱えるし、居室もありとあらゆるところに配置できて、問題が解けていく。何より、住まい手の方の動きや心理がすごく活発に自由になる。だから物理的には面積の小さい家でも広々暮らせたり、その結果家族の仲が良くなったりという効果が起きてくる。そういう目に見えない自由度を見ていくという癖ができてきた」という話をいただきました。

このプランはまさにこれを地で行くプランであります。高断熱住宅をリードしてきたつもりの私たちが、逆に不自由な設計をしてきたような気がしています。