換気による熱損失は、気密化住宅でも意外に大きい

Q1.0住宅のように気密化することにより、隙間からの自然換気は1/10~1/20にも減ります。これを機械換気で補って、0.5回/hの換気を確保すると良いといわれています。シックハウスが社会問題となってからは、ホルマリンなどをほとんど含まない建材の使用が一般化し、今はCO2濃度や匂いなどを指標として検討すると、大きな住宅や家族数が少ない住宅ではもう少し少なくても良いようです。むしろ、換気量が多いと、室内の乾燥の方が問題になっています。

このように、気密化によって住宅の換気量は1.0~1.5回/hから、0.5回/h以下に減りましたから、熱損失も同じように減り、外から入ってくる冷たい空気を温めるのに必要な暖房熱も減ります。この省エネルギー分は、機械換気に使う電気のエネルギーや電気料金に比べてはるかに大きく、気密化が必要だということも理解されるようになりました。

このようにして今の省エネ基準住宅を見ると、換気による熱損失は十分減らされたように見えますが、それでも、北海道の住宅で熱損失の30%近くを占め、東北の3~4地域ではその他の熱損失が多少大きくなることから、20%前後もあります。暖房費を半分以下にするQ1.0住宅では、これは無視できない大きさです。

熱交換換気で換気熱損失を減らすには、さらに気密化が必要

住宅を24時間機械換気するには二つの方法があります。一つはこれまでの気密住宅で採用されてきた、換気扇で住宅の汚れた空気を強制的に排気する方法(第3種換気)です。これにより住宅内は減圧され、住宅の隙間及び換気のために設置する給気口から外気が入ってきます。図3の左図です。図2の自然換気状態に換気扇による減圧分が加わり図のようになります。換気量はほとんど換気扇から出て行く流量に等しくなります。換気ダクトや排気口などの抵抗を計算して換気設計を行い、0.5回/hになるように設計します。この方法なら、気密性が多少悪くても良好な換気ができます。

図3 第3種換気と第1種換気(熱交換換気)の換気状況の違い
図3 第3種換気と第1種換気(熱交換換気)の換気状況の違い

もう一つの方法は、図3の右図で、外への排気と外から入れる給気を、どちらも換気扇で行う方法です(第1種換気)。暖かい排気の熱を利用して、冷たい給気を暖めて取り入れる方法が熱交換換気です。つまり、暖房の熱で暖められた空気をそのまま外に排気しないで、給気を暖める分の熱を回収できるわけです。冷たい外気が直接入ってこなく、水蒸気も回収できるため室内の乾燥を防ぐ働きもします。

この方法では、住宅内の圧力は換気扇を動かしても変わりませんから、図2の自然換気も同時に起こってしまいます。したがって、換気設計はこの自然換気量と熱交換換気の換気量を合わせて0.5回/hになるように設計します。自然換気量は、図1のようにC値に比例します。C値が2・0㎠だと自然換気量はほぼ0.2回/hになりますから、住宅全体の換気量を0.5回/hとするには、熱交換換気は0.3回/hとなります。

つまり0.3回/h分の換気からしか熱回収できないことになり、熱損失の削減はそれほど大きくはありません。したがって、熱交換換気では気密性能が高い方が熱回収が多くなり、その分省エネになるわけです。これを色々なケースで計算したものを図4に示します。熱交換換気を有効に働かせるには、C値が1.0㎠以下、できれば0.5以下が望ましいと考えます。

図4 住宅の気密性が高いと熱損失を小さくできる
図4 住宅の気密性が高いと熱損失を小さくできる

この熱損失低減分を、QPEXで計算し暖房エネルギー削減効果を比較したものが図5です。寒冷地で27%程度、温暖地でも20%程度の削減効果があることが分かります。興味深いのは第3種換気で、換気量を0.3回/hに減らすと、寒冷地で16%、温暖地でも12%も削減することです。第3種換気で0.5回/hの換気では、多くの家が乾燥に悩んでいますが、0.3回/hに減らすことで湿度を10%近く上げることもできます。

図5 省エネ基準住宅の換気方式の違いなどによる暖房灯油消費量と削減率
図5 省エネ基準住宅の換気方式の違いなどによる暖房灯油消費量と削減率

熱交換換気を設置してもあまり暖房エネルギーが減らないという人もいるようですが、C値が2・0程度の家で熱交換換気を0.5回/hで設計すると、合計0.7回/hの過剰換気となり、暖房エネルギーはあまり減らないことになるわけです。