貯めておけるエネルギー量ワットアワーをチェック

ここまでは機器が必要とする瞬時のパワー=ワットを見てきました。一方で、非常時の数日を乗り切るためには、手元にどれだけのエネルギー量が貯めておけるのかも大きな課題です。図5に一般的な製品の手元に貯めておけるエネルギー量、ワットアワーを比較してみました。

図5 放電容量Ah×電圧V=電池のエネルギー量Wh

一番手ごろなエネルギーの缶詰「電池」から見てみましょう。電池の容量は通常、放電容量を表すアンペアアワー(Ah)で表されており、これをワットアワーにするには電池の種類に応じた電圧をかけなければなりません。

通常の乾電池の電圧は1.5ボルト程度なので、アンペアアワーに1.5をかけるとワットアワーに換算できます。充電できない一次電池は使い方で差が大きいのですが、単三であれば数ワットアワー程度と小さなエネルギー量しかありません。

我々の身の回りにあふれる、スマートフォンやPCなどの電池はほとんどが高密度なリチウムイオン電池であり、電圧は3.7ボルトと高めです。スマートフォンで10ワットアワー、ノートPCで50ワットアワー程度となります。スマートフォンやPCを充電するには乾電池のエネルギー量では不足しますから、モバイルバッテリーの備えが現実的です。

同じ電池でも、住宅で普及がはじまっている定置型蓄電池ではだいぶ大きく、数千ワットアワーが一般的です。停電時にも貯めた電気を家で利用できますが、電気出力が3000ワット程度とやや小さく、住宅の全ての用途を賄うのは難しいため、停電時にも確保したい大事な用途に限定して給電するのが一般的です。

電池に貯まっているワットアワーに比べると、ガスや石油のエネルギー量はまさに桁違いに大きくなります。小さなカセットガスでも3000ワットアワーを楽に超え、石油のポリタンクやプロパン・車のガソリンにいたっては数百万ワットアワーのレベルです。厨房・暖房・給湯といったワットの大きな用途を長時間動かすためには、こうした「燃料」のエネルギー量をどう活用するかが肝心です。

カセットガスで非常時対応を考える

ここで、筆者なりの非常時対応をご紹介しましょう。状況把握に不可欠なスマートフォンの電源確保は最優先として、モバイルバッテリーを備え、ノートPCは利用を控えて内蔵の電池を温存します。小型のソーラーバッテリーも一応もっていますが、まあ気休め程度です。

問題は、調理・暖房・給湯といった大きなワットを必要とする用途をどう賄うか。筆者は自家用車を所有しておらず、集合住宅に住んでいるので石油の備蓄もできません。入手が容易でそれなりのワットアワーを貯めているとなると、カセットガスが一番現実的に思われます。図6にあるように、定番のカセットコンロ以外にも、最近ではカセットガスを利用した暖房機器や発電装置が登場しています。

図6 カセットガスの機器とそれぞれのエネルギー量

石油は1〜2年で古くなるとされていますが、カセットガスは寿命が7年程度とされています。鍋料理などで日常的に利用するので、カセットの寿命の間に使い切れそうなこともポイント。カセットガスを30本くらい備蓄しておけば十万ワットアワーのエネルギー量ですから、まあ数日はしのげるかなと考えています。

車から家に電気を供給するV2Hは注目の技術

図5にあった通り、車は燃料や電池をたくさん積んでおり、非常時のエネルギー供給が期待されます。通常のガソリン自動車では、シガーソケットやオプションの100Vコンセントから100ワット程度の電気が取り出せるため、数ワットのUSB給電やPC充電には十分活用できます。ただし、電気を貯めている鉛バッテリーは大きくないので、バッテリーがあがって起動できなくならないよう注意が必要です。

図7に示すように、最近普及が目覚ましいプラグインハイブリッド(PHV)や電気自動車(EV)では、モーター駆動のための大容量の電池を積んでいます。こうしたPHV・EVの車種の中には、1500ワットと大きな電気を取り出せるコンセントが用意されているものがあり、パワーのワット・エネルギー量のワットアワーともに、かなり本格的な電気供給が期待できます。

図7 プラグインハイブリッド(PHV)や電気自動車(EV)の電池容量と出力の比較

最近ではこれをすすめて、家から車に充電するだけでなく、車から家に電気を送るV2H(Vehicle to Home)が登場してきています。最近のEVは数万ワットアワーと巨大な電池を積んでおり、さらにV2Hは6000ワットというパワフルな電気を供給可能なため、車から住宅内の全用途の電気を賄うことが十分に可能なのです。

家の屋根に大きめの太陽光発電を載せておけば、昼間は太陽光で車を充電しておき、夜は車から家全体の電気を賄うことで、停電時にも普段と変わらない生活を送ることが可能です。このV2Hについては、また別の機会に取り上げてみたいと思います。

今回は、非常時のエネルギーについて考えてみました。直近の冬の対策とともに、家と車を融合した長期的な方向も見えてきました。短期と長期の両方について、バランスのとれた対応を考えていくことが大事になりそうです。


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※次回のテーマは<窓こそ省エネ・快適の最重量パーツ>です。

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