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Q リフォーム済住宅の換気設備不良について

質問者/北海道・mayunomi

記事No.13154/カテゴリ:結露と換気の問題

大規模な問題ではないのですが、教えていただけると助かります。築30年のリフォーム済み住宅を4年前に購入しました。サイディングではなく、ALCパネルに吹き付けタイル塗装の建物です。外壁にクラックが出てきたため塗装工事会社に相談したところ、問題が見つかりました。バスルームの換気口の周辺のALCが膨らんでおり、塗装業者からは、換気口がしっかり外まで出ていないのではないか、湿気がALC内に浸入し、冬季の寒さ(当地札幌です)で凍結してALCが変形したのでは、と指摘されました。換気口周辺のALC交換が必要、とのことです。

売主は不動産会社で、売買契約書上の保証期間は2年となっていますが、買主には察知できない潜在的な瑕疵だと判断された場合、補修費の負担を求めることはできないものでしょうか? 尚、補修に着手していないので、売主の会社にはまだ申し入れていません。

A:回答者/一級建築士事務所(株)北工房 代表取締役 栃木 渡

ALCのこの類の凍害は、北海道ですと起こりがちな事象です。浴室に限らず、冬期間は外部より室内空気に含まれる空気中の絶対水分量が多い(要は、室内の方が大幅に温度が高い)ので、排気された水分量の多い空気が、何らかの理由(方角・風向き等)で換気口周辺に滞留し、それがALC表面に付着し凍結し…のサイクルを繰り返し発生します。ちょっと注意して街中を歩くと、北海道の場合は相当数、同様の事象が見られますよ。ALCではなくサイディングなどでも発生します。結露→凍害、という北国の典型的な事象ですね。

補修としては、セルフードを一旦外してALCの補修材で補修し塗装、ということでいけそうですが、補修だけですと同様のことが繰り返され、また凍害を起こします。根本処置になっていないからです。

私は、凍害を起こした範囲よりやや広めのステンレス板などを張って、ALC面を保護する方法で対応しています(ちょっと見た目は悪いですが…)。 塗装だけだと心配ですね。放置したままだと、凍害がどんどん進行して、補修どころではなく、ALCの張り替えという大事になりますので、早めの処置をお勧めします。

さて、責任問題ですが、仮に私がジャッジするなら、「築30年」「引き渡し後4年経過」「不具合事象の重篤度」などから総合的に判断すると「買主には察知できない潜在的な瑕疵」というより、多分「経年劣化」と判断するでしょうねぇ…。瑕疵だと申し立てても、当然すぐには売主さんは対応しないでしょうし、そのことで揉めて時間だけが経過し、さらに事象が悪化するリスクより、早めにやってしまった方がいいですよ、とアドバイスすると思います。元々(引き渡し時)どうだったかのエビデンスもありませんので、水掛け論になりそうですね。この事象は発生するかどうか、なかなか予見しにくいので、我々設計者にとっては悩ましいところです。

a-1:回答者/キ?44

恐らく…ですが、バスルームということで、排気には通常の場所よりも多くの湿気が含まれます。それが外気に触れると、水になり、氷になる。このため、外壁表面に水滴として付く、氷としてこびりつく。でもって、表面が傷つく…少しずつ水分が中へ…ポップアップ。という流れでしょう。確かに、配管とフードとの取り合いも疑うべきですが、真っ先にそれかと思うのです。

まずは、このフードは、はずして交換を考えてください。その時に、水返しが付いた製品がありますので、それを使ってください。交換の時に、配管が中から出てくる周辺、フードとの取り合いなど、しっかりと見て確認、修繕しながら納める必要があると思います。責任問題に関しては、とりあえずノーコメントで。

a-2:回答者/医王山 中野企画

ALCが膨れたという話は、初めてです。欠け、割れ、剥離などは見たことがありますが。30年前であれば、外壁塗装は2回から3回程度実施されていると思います。水平部分もコーキングではなく塗装のように見えます。

ALCの主原料は珪石、セメント、生石灰、発泡剤のアルミ粉末です。オートクレーブ(高温高圧蒸気釜)養生という製造工程が特徴の、多孔質、軽量、無機質の材料です。多孔質で軽量のため、ALCは水が浸透せずに浮きます。この写真から判断はできませんので、ALCメーカー等に相談したほうが良いと思います。改装ではよく、弾性(クラックに追随する)系で防水性能がある塗装を使用します。その場合、水切りや取り合い部で塗装面裏に水が入り膨らんだケースもあります。言われるように金物との取り合い部は、水(水蒸気)が入らないようにコーキング等で止水し、裏に回らないように納めるべきです。もう少し資料があれば…


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