「Q1.0住宅を計画する上での思わぬ落とし穴」(1/2)

4間×4間総2階建て・32坪プロトタイププラン

この「Q1.0住宅デザイン論」の連載第9回10回11回で「Q1.0住宅のプロトタイプデザイン」と題して、コンパクトな総2階建て住宅のデザインを紹介しました。2018年には、2.5間×6間のプロトタイプ住宅が実際に建設されました。2019年も同じく2.5間×6間プランの改良型が着工、2020年春オープンの予定ですので、いつか詳しくご紹介したいと思います。その連載の最後に、建築家として高名な、堀部安嗣さんの設計による4間×4間プランを紹介しました。このプランを参考にさせていただいて、来年建設を予定している3棟目のプランをご紹介します。

5間×10間の50坪の間口の狭い小さな敷地を想定し、間口いっぱいに4間×4間の総2階住宅を配置しています。北側の道路側に車2台分の駐車スペースをとると、南の庭は奥行き5m弱残ります。16坪の総2階で、32坪の延べ床面積は、コンパクト住宅としては大きいほうになります。

図1 4間×4間プロトタイププラン
図1 4間×4間プロトタイププラン

堀部さんのらせん階段のまわりに動線を配置したところを真似させていただきました。といってもらせん階段は一般の工務店にはつくるのが難しいので、木造の階段とし、まわりの壁を必要に応じて薄くして動線を確保しています。2階のプランは浴室を南に配置した以外はほとんど同じです。コンパクトの中でも大きいほうになる住宅のため、1階には予備室的なスペースを確保して、多目的に使えるようにしてあります。

リビングとの間の間仕切りを、建具で構成し、リビングを広く使うこともでき、普通の個室としても使えます。建具を開けておけば、家族の遊び場としても機能します。高齢になり、2階の寝室がつらくなれば、寝室としても使うことができます。この部屋を加えて4LDKの構成としました。堀部さんの住宅の1階のような広々感は失われましたが、これも十分あり得ると考えています。

4間×4間総2階建て住宅の省エネルギー性能

4間×4間プランは、正方形プランになるため、床面積に対して外壁面積が小さくなり、住宅の熱損失を減らすにはとても有利になります。断熱材の厚さや開口部の仕様を変化させて、暖房エネルギーがどの程度になるか、私たちが使っている暖房エネルギー計算プログラム「QPEX」で分析。表1でL0、L1、L3の3種類の断熱仕様で比較してみました。

表1 プロトタイププランのQ1.0住宅レベル別断熱仕様
表1 プロトタイププランのQ1.0住宅レベル別断熱仕様

天井の断熱は普通に平らな天井として、屋根断熱ではありません。床は、1階のトイレとキッチンまわりのところだけ、内側基礎断熱とし、他の部分は床断熱としました。このほうが、ローコストに床まわりからの熱損失を減らすことができます。床を貫通する設備配管工事は、基礎断熱なので容易で、凍結の心配もありません。

L0の仕様は、北海道で一般的に行われる省エネ基準の住宅(北方型住宅)を想定しています。省エネ基準のUA値は0.46ですが、この仕様では少し良くなっています。省エネ基準ぴったりのUA値で暖房灯油消費量が1058ℓになるのに対して、この仕様では933ℓと、省エネ基準の88%になります。

L1は、Q1.0住宅のレベル1を目指した仕様です。断熱材の厚さは、天井の吹き込みグラスウールを385㎜と少し厚くし、基礎断熱部の断熱材を100㎜としました。変えたのは、窓のガラスをLowーE・ペアガラス16㎜・アルゴンガス入りとし、玄関戸も断熱性の良いものに変えました。最大の変更点は、第3種換気を熱交換換気に変えたことです。これらによって、灯油消費量は533ℓとなり、省エネ基準住宅の半分になります。

L3は、Q1.0住宅のレベル3を目指した仕様です。外壁の断熱を205㎜とし、さらに性能を上げるために発泡断熱材50㎜を間に挟みました。これで、GW換算で250㎜級の断熱になり、しかも発泡断熱材外張り付加断熱に比べて、隣家からの延焼に対しても安全性が高くなります。床もGWボード50㎜を追加しました。これで床の表面温度は平均で約1℃上昇して床の冷たさはほとんど感じなくなります。窓のガラスをLowーE・トリプルガラス16㎜・アルゴンガス入りとしています。これも窓からの寒さ感を改善します。これで、灯油消費量は314ℓとなり、省エネ基準住宅に比べて、30%になります。室内の快適性もレベル1に比べてかなり向上します。

普通、Q1.0住宅レベル3を目指すともう少し性能を上げる必要があるのですが、比較的簡単にレベル3が可能になりました。敷地も狭く、隣家もすぐ近くで、大きな窓もあまり開けられません。しかも方位も南西向きと設定して、日射取得熱はかなり小さくなっています。それでもこの仕様でレベル3が実現するのは、コンパクトな総2階建て住宅のおかげでしょう。その中でも一番有利になる4間×4間というかたちが影響していると思います。この仕様ならそれほどコストをかけずに済みます。どうせ建てるならこのくらいの仕様にしておけば、長い将来も安心して快適な全室暖房の生活を送ることができます。

これより仕様をあげて、レベル4を目指すとかなりのコストがかかり、そして暖房費の削減分は年間灯油消費量100ℓ程度で、年間1万円にもなりません。私は、コストとのバランスから、このQ1.0住宅レベル3ぐらいが良いのではないかと考えています。