なんとなく「薪ストーブ、いいなあ…」と思いつつも「どうしても欲しかったら入れればいいか」と導入を後回しにしている方はいませんか?薪ストーブ屋さんや薪ストーブをよく採用する建築会社の方とお話していてよく耳にするのが、「工事が始まってから薪ストーブを入れたい、って言われると悩ましいよねえ…」という声。それは一体どうしてなのか。北海道リンクアップ代表の唐牛宏さんに教えていただきました。


薪ストーブに少しでも興味があって、これからつくる家に入れようかどうしようか…と思っているなら、ぜひ家づくりが具体化する前に一度ショールームへ話を聞きにきてもらえれば、と思うんです。というのも、薪ストーブはプランニングを始めとする家づくり全体に大きく影響するからです。薪ストーブの導入を早めに検討したほうがいいのには、主に次の3つの理由があります。

理由1:暖房として効果的な場所に設置するため

薪ストーブは家のつくりによって、暖房としての効果がより期待できる設置場所が変わってきます。例えば、薪ストーブは煙突からも放熱します。その熱を活かすなら、上下階を効率よく暖めるために、吹き抜けを生かした設計のほうがよいかもしれません。またLDK全体を均一に暖めたいなら、LDK空間の真ん中に置いたほうがムラなく暖まりやすいということもあります。

玄関土間に薪ストーブを設置したお住まい。大きな吹き抜けで2階とつながる
上の写真の家の2階の様子。空気の自然対流で、LDKへも薪ストーブで暖められた空気が流れるよう設計されている。煙突からもじんわり放熱
リビングとダイニング・キッチンの間に薪ストーブを設置。薪ストーブの上は吹き抜けになっていて、上へも暖かい空気が回る
リビングとダイニング・キッチンの間に薪ストーブを設置。薪ストーブの上は吹き抜けになっていて、上へも暖かい空気が回る

プラン決定後に置き場所を決めるとなると、その家やご家族にとっての最適な場所に設置できず、場合によってはプランを一から検討し直す、なんてことにもなりかねません。

理由2:薪ストーブをめぐる動線をスムーズにするため

薪ストーブに欠かせないのが「薪」です。寒い冬のさなか、それがたとえ夜でも、薪を切らしてしまったら外の薪置き場から家のなかへ運び込まなくてはなりません。そのため、薪置き場と薪ストーブをスムーズに行き来できる動線計画は重要です。

薪ストーブのある土間の隣に、屋根付きの薪置き場。吹雪の日でもさっと薪を運び込める
薪ストーブのある土間の隣に、屋根付きの薪置き場。吹雪の日でもさっと薪を運び込める

また「薪置き場や薪割り場をどこにするか」という問題もあります。薪の搬入場所と薪置き場、薪割り場の位置関係が遠いと、時間も労力も、薪割り作業全体の負担が大きくなってしまいます。車やトラックを乗り入れる道路のなるべく近くに作業スペースや薪棚を設けるなど、家の配置計画も事前に検討しておくことが大切です。

道路に面した庭の一角には、薪割りスペースや薪を積んでおく場所を確保。これなら薪の搬入も家の中への運び入れもスムーズ

理由3:建築費UPを防ぐため

当初の仕様になかったものを入れるとなると当然、建築費がアップします。薪ストーブ本体の費用はもとより、煙突代、炉台や炉壁の施工・建材費のほか、屋根の工事費や薪棚代など、まとまった額が必要に…。予め薪ストーブの導入を計画しておくことで、全体のコストバランスを考えた予算を組むことができます。

はじめから薪ストーブを計画に入れていると、いろんな意味でロスや負担が少なくなる

薪ストーブの暖かさは一度使うと病みつきになりますし、揺らぐ炎の美しさは何物にも代えがたい安らぎを与えてくれます。ただ、その暮らしを続けるためには、他の暖房器具にはない薪割りや薪運び、火加減の調整や灰の掃除などたくさんの「実務」が必要です。

プランニングや工事開始後の薪ストーブ導入は、お客様にとって大きな負担を伴います。家づくりで薪ストーブの導入をお考えの皆さんは、なんとなくのイメージだけで迷わないで。まずはお近くのショールームへ足を運んで暖かさを実感したり、どんなことを考慮すべきかをスタッフに聞いたりして薪ストーブへの理解を深めてから、建築家や建築会社にプランを相談されるのがおすすめですよ。