さまざまな機能や役割があって、家にはなくてはならない「窓」。ということで先日は、木製サッシについてお話ししましたが、今回は現在の、そしてこれからの高性能住宅の強い味方「樹脂サッシ」について、その特徴を紐解いていきたいと思います。

ドイツ生まれの樹脂サッシ。
冬だけでなく、夏にも性能を発揮

樹脂サッシが誕生したのは、1955年。寒さの厳しい地域でも省エネで快適な住環境をつくろうと、ドイツのヘキスト社によって開発されました。日本では1975年に発売が開始され、主に寒冷地で普及しました。熱を伝えやすいアルミに比べ、樹脂の熱伝導率は約1000分の1。外気温の影響を抑えるので結露が生じにくく、カビ・ダニの発生を防ぐというメリットがあることから、冬の寒さが厳しく、高性能住宅が一般化している北海道での普及率は約90%にも上ります(2014年現在)。また近年はその断熱性能が、夏の冷房負荷の低減や高い防音効果にもつながると評価され、温暖地での採用率も上昇。樹脂サッシメーカーは、さらなる高断熱化に積極的に取り組み、機能の向上に取り組んでいます。

樹脂サッシを使うと、大きな窓を入れても一年を通して快適な室温を保つことができる
樹脂サッシを使うと、大きな窓を入れても一年を通して快適な室温を保つことができる

 

日本の多様な気象条件に対応 

樹脂製品は、「錆びない」「腐らない」という特長を持つ耐久性に富んだ素材です。中でも樹脂サッシに使われる「塩ビ樹脂」という素材は耐用年数が長く、すでにドイツで50年以上、日本でも30年以上の使用実績があります。熱にも強く真夏の直射日光を受けていても、その形状や機能は30年間保持されています。また気密性が高いため、台風の暴風雨さえもシャットアウト。沿岸地域の大きな悩みである塩害にも強く、劣化を防ぐことができます。

眺望の良さを生かしてL型に設けたリビングの窓。樹脂サッシは錆びに強いので、海に近いロケーションの家との相性が良い
眺望の良さを生かしてL型に設けたリビングの窓。樹脂サッシは錆びに強いので、海に近いロケーションの家との相性が良い

 

デザインの自由度、メンテナンス性も魅力

成形しやすいという樹脂特有の性質を生かした、デザインの自由度の高さも樹脂サッシの利点。最近では、フレームを細くしたインテリア性の高い商品も登場して、空間に合ったコーディネートもしやすくなっています。お手入れが簡単なのも樹脂サッシならでは。錆や腐食に強いうえに、大幅な変色や退色もないので、塗り替えなどのメンテナンスなしに長期間にわたって性能を保てます。沿岸地域や交通量の多い道路の沿線では年に34回、一般的な地域なら年に12回、やわらかい布で表面を水拭きするだけでOKです。

外壁のデザインに合わせて、色をコーディネート
外壁のデザインに合わせて、色をコーディネート

横に細長い樹脂サッシを用いて、風景を効果的に切り取ることができる
横に細長い樹脂サッシを用いて、風景を効果的に切り取ることができる

 

エコリフォームも、簡単にできる

樹脂サッシは、内窓をつけるだけのエコリフォームにも最適。簡単な工事で、今住んでいる家の断熱性能をアップさせることができます。窓は、冬の冷たい外気や夏の熱い外気の影響を一番ダイレクトに受ける場所。樹脂サッシのエコリフォームで、暖冷房負荷を減らしたり、結露を抑えたり、外の騒音を軽減するなどの効果が期待できます。もちろん、今ある窓枠ごと交換することもできますが、壁を一部壊さなくてはならないので、その場合は外壁の張り替えや家自体の断熱補修などの、大規模なリフォームと合わせて交換するのがおすすめです。

外壁も含め、断熱改修した住まい。アルミサッシを樹脂サッシにして、窓まわりの断熱性能を強化した
外壁も含め、断熱改修した住まい。アルミサッシを樹脂サッシにして、窓まわりの断熱性能を強化した

住宅の高性能化とともに、樹脂サッシは全国的にも広く普及しつつあります。「窓」は、部屋の印象や快適性を決める一つの大切な要素。家づくりの際には、ぜひ窓にも注目してみてくださいね。

(文/Replan編集部)

協力/樹脂サッシ工業会