実例写真や寸法図で解説!「トイレ手洗い器」の種類・サイズ・選び方

公開日:2025.10.13 最終更新日時:2025.10.8

Replanが教える家づくりに必要な基本、あれこれ。

新築やリノベーションで「トイレ」について考えたとき、迷うことの一つが「手洗い器」です。そもそも「手洗い器」は必要なのか不要なのか。取り付けるとしたら、どのような選択肢があるのか…。そこで今回はインテリアコーディネーターの本間純子さんに、「トイレの手洗い器」について教えていただきました。

トイレの手洗い器の役割と必要性

1. 家族の健康を守るために大切

トイレの手洗い器は衛生面の観点で大切です。トイレ内で手洗いを済ませることで、洗面所へ移動する間のドアノブや壁に排泄物に由来する菌が接触するのを防ぐことができます。

また来客時にも便利。間取りによっては洗面所はプライベートな空間になります。ゲストが気兼ねなく手洗いできますし、自宅のプライバシーにも配慮できます。

2. トイレ空間の利便性が向上

トイレ空間の中に手洗い器があることで、トイレの利便性がよくなる面もあります。まず、わざわざ洗面所へ行く手間が省けますし、朝の身支度で洗面所が混み合っていても、それを気にせずに手が洗えます。トイレ掃除の際にも、すぐに水が使えて便利です。

トイレの手洗い器を、別に設けるメリットは?

「手洗い器付きタンク一体型のトイレ」のメリット

「トイレのタンクで手を洗えばいいのでは?」と思う方も多いでしょう。それも一つの選択肢です。従来からよくある「手洗い付きタンク一体型のトイレ」には、以下のようなメリットが考えられます。

  • トイレ本体に付属しているので初期費用が安く済む
  • 手洗い器のためのスペースが必要なく、トイレ空間を広く使える
  • 構造がシンプルで故障が少なく、メンテナンスしやすい
  • 別に設けた手洗い器で手を洗うよりも、節水効果が期待できる
一般的な手洗い器付きのタンク一体型トイレ
一般的な手洗い器付きのタンク一体型トイレ
単独で手洗い器を付けない分、コストダウンできて省スペース
単独で手洗い器を付けない分、コストダウンできて省スペース

トイレの手洗い器を設置するメリット

一方で、トイレの手洗い器を設置するのには、以下のようなメリットが考えられます。

  • 手を洗うのに適切な高さに設置できる
  • 設計次第では、石鹸やハンドソープを置くスペースが取れる
  • しっかりと手を洗える水量と水圧が出せる
  • トイレ全体をインテリアコーディネートできる
  • 混合水栓を選べば、冬は温水で手洗いが可能

単独での手洗い器設置は、こんな人におすすめ!

このような特長から、単独での手洗い器の設置がおすすめなのは、以下の条件に当てはまる方といえそうです。

  • 人気の「タンクレストイレ」を設置する予定の方
  • トイレ空間の広さにゆとりがある(少なくとも0.5坪。理想は0.75坪以上)
  • トイレ空間のデザイン性や快適性を重視したい方
  • 寒い時期に温水で手を洗いたい方
  • 小さな子どもや高齢者がいるご家庭
  • タンク一体型で、手を伸ばしたときにスカートの裾が便器に触れるのが嫌、という方

トイレの手洗い器の主な種類

トイレの手洗い器は形状や設置方法の違いにより、次の5つのタイプがあります。

■壁付け単体手洗い器

手を洗う機能のみのコンパクトな手洗い器です。基本的に給排水管が露出しますので、どちらかというと機能重視の手洗い器といえます。給排水管をトラップカバーで覆うデザインや、収納キャビネットの中に給排水管を収めるタイプもあります。

■埋め込み手洗い器

手洗い器を設置することで、トイレの出入りがしにくくなったり、トイレが狭く感じたりすることがあります。間仕切り壁に埋め込むことで、トイレ内への出幅を小さくする手洗い器です。スリムですっきりした印象ですし、開口部への影響も少なくてすみます。

■カウンター付き手洗い器

カウンターの一部に手洗い器が設置されているタイプです。カウンター下にペーパーホルダー、リモコン、収納などを組み合わせることができます。収納部分にはトイレットペーパーのストック、掃除用具なども納めることができるので、トイレ内がすっきり片付きます。

■ベッセル型手洗い器

カウンターの上に鉢のような手洗い器を設置するのがベッセルタイプです。真円、楕円、角形などボウルの形状はさまざま。多くが陶器でできていて、汚れがつきにくい「防汚加工」も施されています。お掃除がしやすいのもメリットです。

カウンター下にはペーパーホルダー、リモコン、収納などを組み合わせることができ、空間をすっきりと見せられるのも魅力です。

■カウンター一体型手洗い器

カウンター一体型は、カウンターの凹んだ箇所が手洗いボウルです。ボウルとカウンターの接合部は、継ぎ目が滑らかで、汚れがたまりません。こちらは人造大理石などの樹脂でできています。硬い素材ですが、メラミンスポンジなどは使えません。取扱説明書で確認しましょう。

コンパクトな手洗い器のサイズ感

トイレに割ける広さは限られているため、手洗い器は省スペース化が進んでいます。コンパクトさを主張している手洗い器は、本体の奥行きが200㎜以下のものがほとんど。手洗いボウルの内法寸法には微妙な差があります。

150㎜以下だと、正直けっこう小さい感じがします。170㎜以上だと少し安心感があります。洗いやすいサイズは手の大きさにもよりますし、手洗いボウルの形状や深さも使い勝手に影響しそうです。コンパクトサイズを選ぶときは、ショールームなどで実際に洗う動作をしてみると安心です。

トイレの手洗い器選び、4つのポイント

1. トイレの広さを正確に把握する

手洗い器を選ぶ際、最も重要なのがトイレ空間の正確な寸法把握です。

  • 便器から壁までの距離
  • 扉の開閉スペース
  • 人が立つ位置

を考慮した動線を測定しましょう。

2. 家族構成と暮らしのシーンを考える

手洗い器のサイズや機能は、家族構成や使用頻度によって最適なものが変わります。ひとり暮らしや夫婦二人暮らしなら小型でシンプルなタイプで十分ですが、子どもがいるご家庭では大きめのボウルで水跳ねしにくいタイプが実用的でしょう。

来客が多い家では、デザイン性の高いカウンタータイプで小物置きスペースがあると便利。高齢者がいるなら、水栓をセンサー付きや温水機能付きにしたり、高さを750〜800㎜と低めにしたりすると機能的です。

3. メンテナンス性を考慮

毎日家族が何回も使うため、手洗い器まわりはすぐに汚れてしまいます。長くきれいに使い続けるためには、掃除のしやすさも重要。手洗いボウルの形状や素材、カウンターとの継ぎ目など、掃除がしやすいものを選ぶと、きれいを保ちやすいですね。

4. デザインとインテリアの調和

手洗い器は、トイレ空間の印象を大きく左右します。

例えば、

  • シンプルモダン →シンプルな白い陶器やガラスボウル
  • ナチュラル →木目調カウンターと陶器の組み合わせ
  • 和風 →焼き物の手洗い鉢タイプ

など、内装の雰囲気に合わせてコーデイネートすると全体が調和します。また水栓金具やタオルハンガーのデザインや素材も、空間の統一感を左右するポイントです。カタログだけでなく、ショールームで実物を見て質感や色味を確認すると、イメージとのギャップを防げます。

トイレの広さに応じた、手洗いカウンターの寸法例

最も一般的なサイズ!
0.5坪(内法:780×1,690㎜)のトイレの場合

0.5坪(内法:780×1,690㎜)は一般的なトイレの広さです。便器前に立つことはもちろん、便器に腰掛けるときに身体が前傾してもゆとりがあります。ペーパーホルダーやリモコン、手すりなどに、手が届きやすい寸法です。

ただ手洗い器を単独で付けるには、ギリギリの広さ。カウンターの奥行きに合わせたコンパクトな手洗い器を組み合わせると無理がありません。

■奥行き幅95〜110㎜の手洗いカウンターを設置した寸法例

ペーパーホルダーの奥行き程度の寸法のカウンターです。カウンター下の収納スペースは最低限ですが、カウンターが手すりの代わりになったり、小さな花瓶や芳香剤を置けたりするなど、あると重宝します。

■奥行き幅120〜150㎜の手洗いカウンターを設置した寸法例

便器のサイズによっては少し奥行き幅の広いカウンターでも取り付けは可能です。カウンター下に収納を設けることもできますが、扉の開閉と便器までの寸法、自分自身の動作寸法を含め、しっかりと確認しましょう。

広さにゆとりが持てる!
0.75坪(内法:1,235×1,690㎜)のトイレの場合

収納・手洗いカウンターを付けることを前提にした広さです。手洗いカウンターを設置しても床部分は950㎜程度の寸法があります。標準的なサイズの手洗い器が使えますし、ボウルとカウンターが一体になったタイプも選べます。

■奥行き270〜300㎜の手洗いカウンターを設置した寸法例 

収納のレイアウトに自由度があり、掃除道具やトイレットペーパーのストックを置いておくための収納スペースもたっぷり確保できます。扉の開閉で便器に干渉する心配もありません。

今注目のコンパクト住宅で採用
0.4坪(内法:780×1,235㎜)のトイレの場合

昨今注目の狭小住宅は、トイレ空間も最小限になりがち。長手寸法の1,235㎜は、便器から身体を起こすときに必要な最小寸法です。これ以上狭くなると、トイレとして使い勝手が良くありません。

■壁埋め込みタイプの手洗いカウンターを設置した寸法例 

便器前のスペースが狭いため、できるだけ奥行きが浅くて出入り口に干渉しない手洗い器を選ぶ必要があります。カウンターの奥行きは100㎜程度が目安。壁に近い色にすると圧迫感が軽減できます。

まとめ

正方形のトイレ、細長い廊下のようなトイレ、便器を斜めに設置するトイレ等々、トイレ空間の形状は各家の間取りによってさまざまです。今回は、代表的なトイレのサイズを例に、手洗い器とカウンターのタイプや寸法をご紹介しました。

トイレの手洗い器はサイズが小ぶりで、手を洗うときに、なんとなく頼りなくて水ハネしやすいイメージがありますが、実際に洗ってみると意外に水の飛び散りは控えめ。むしろ「洗い終わって手を振る動作」が、水ハネ汚れの主要因のようです。

タンクレス便器の広がりによって、手洗い器はデザインのバリエーションが増え、コンパクトでもしっかり洗えるものが多くあります。コロナ禍以降は住宅でも自動水栓を取り付けるケースが増加していますし、最近は水ハネしにくい水栓も販売されています。

手洗いボウル内の水滴や、周囲の壁やカウンターに飛び散った水ハネは、ホコリやチリと混ざり、放置すると頑固な汚れになりがちです。トイレは毎日使うところなので、デザインはもちろん、機能性や清掃性までしっかり考えて選びたいですね。

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