夢とロマンが詰まったお店、ヘルシンキの「Artek(アルテック)」

公開日:2025.11.11 最終更新日時:2025.11.10

フィンランドに半年間滞在していたReplanスタッフがお届けする、北欧の暮らしや建築のこと。

ヘルシンキの中心部、クラシカルな街並みに溶け込むようにして佇む「artek Helsinki(アルテック ヘルシンキ)」に行ってきました。実はartekの直営店があるのは、ヘルシンキと日本だけ。一歩足を踏み入れると、そこにはアルヴァ・アアルトの哲学をそのまま体現したかのような、静かで芯のある空間が広がっていました。

白を基調にした壁面と木の温もりが絶妙に調和した店内には、Artekの新作からおなじみの定番まで、まるでアートギャラリーのように美しく配置されています。

公式サイトによると、Artekは1935年に「家具を販売するだけではなく、展示会や啓蒙活動によってモダニズム文化を促進すること」を目的として、アルヴァ・アアルトをはじめとする4人の若者によって設立。「Art(芸術)」と「Technology(技術)」の融合を掲げ、その頭文字を取って“Artek”と名付けられたそうです。

何を隠そう私の北欧への入り口になったのが、取材先などで見かけるArtekの家具たちでした。可愛らしさとスマートさが共存したミニマルなデザインと、素材感やカラーリングのバランス、そして製品としての実用面の高さ。

「いいものを長く」使い続けられるのは、シンプルかつ飽きない存在だからこそです。ただの家具としての存在ではなく、使える芸術品として溢れる魅力が、世界中の人々を引きつけているのでしょう。

今回が初めての訪問でしたが、目のやり場に困るほど(?)の充実ぶり。どの商品も一つひとつが完成されたフォルムでありながら、親しみやすい余白もあって、生活の中に自然と入り込んでくるような佇まい。春の爽やかな香りが漂う空気感にのまれるように、随分と長居をしてしまいました。

一階には「Stool 60」にフォーカスしたワークショップの案内も。あのアイコニックなスツールの座面や脚を自分で組み合わせて、まったく新しい一脚を作ることができるのです。

ベーシックなバーチだけでなく、さまざまな素材やポップなカラーリングも用意されていて、思わず「これは何回でもやってみたいなぁ」と叫びたくなるラインナップ。

一脚の中で「Lレッグ」の素材感やカラーをアレンジできればどれほど楽しいだろうか…と眺めては、お値段を見て現実に引き戻されて行きました…。

「Stool 60」は色バリエーションも大きな魅力
「Stool 60」は色バリエーションも大きな魅力
脚の色を1本だけ変えてみてもおもしろそう
脚の色を1本だけ変えてみてもおもしろそう
Lレッグが壁一面にオブジェのように並ぶディスプレイも圧巻
Lレッグが壁一面にオブジェのように並ぶディスプレイも圧巻

また、ヴィンテージ版が並ぶ「2nd Cycle」コーナーも必見。長い年月を経た木の風合いや、色褪せたペイント、そして使い込まれた座面の表情ひとつひとつに、ストーリーが宿っているようでした。

しかもそのバリエーションの多さが本当に楽しい。新品の清潔さも魅力だけれど、誰かの暮らしを経てここにたどり着いた家具たちには、使われてきた時間が詰まっているように思います。これはもう、感覚が開かれる瞬間でした。

いわゆるヴィンテージ。もし自分がStool 60を手に入れたらこういうふうに育っていくのかな、と妄想したり
いわゆるヴィンテージ。もし自分がStool 60を手に入れたらこういうふうに育っていくのかな、と妄想したり

Artekの店内は、ただ商品が並んでいるだけではありません。ところどころのブースが生活シーンを想定してコーディネートされていて、それぞれが「これが理想の部屋かもしれない…」と思わせてくれる完成度の高さ。それは決して押し付けがましくはなく、あくまで静かに、自然に心を揺さぶってくるようでした。

店頭のレイアウトや家具のコーディネートは定期的に変更されているので、訪問するタイミングごとに違った雰囲気の空間を体感できるのが楽しみの一つでもあります。

完成された世界観にうっとり
完成された世界観にうっとり
いつかこの部屋に住むと決めました
いつかこの部屋に住むと決めました

2階には「Vitra」をはじめとした他ブランドのプロダクトも組み込まれた空間が広がっていて、デザインが国境を越えて呼応し合っている様子に、ちょっと感動すら覚えました。これだけいろいろなアイテムが一つの空間にまとめて並んでいるのに、全体が調和してるのが本当にすごい!

さまざまなブランドのインテリアが不思議と調和している
さまざまなブランドのインテリアが不思議と調和している

忘れてはいけないのが、店内をやわらかく包むArtekの照明の数々です。主張しすぎず、かといって存在感がないわけでもない、その絶妙なバランス感覚。Artekの照明は、ただの「光源」ではなく、「居心地のいい場をつくるための装置」なんだなと思います。

視線を移すたびに、その場に必要な明かりがそこにあって、気がつけば心地よさに包まれている。冬が長いフィンランドで生まれたブランドだけに、暗くても居住空間に豊かさがもたらされるのは、こうした優しく美しい照明があるからこそなのだと実感しました。

このartekを代表する照明たちが1アングルに収まり切るなんてあっていいわけがない、という贅沢な光景。ちょっと視力が良くなった気すらします
このartekを代表する照明たちが1アングルに収まり切るなんてあっていいわけがない、という贅沢な光景。ちょっと視力が良くなった気すらします
和を感じさせるイサム・ノグチの照明。形の違う灯りを複数レイアウトするのもまた美しい
和を感じさせるイサム・ノグチの照明。形の違う灯りを複数レイアウトするのもまた美しい

本場フィンランドのArtekは単なるショップではなく、自分の暮らしを見つめ直すためのミュージアムであり、実験室であり、インスピレーションの巨大な泉でした。これからもお世話になります(笑)。

「2nd cycle」の店舗にも行ってみました

この「2hd cycle」は主にartekのビンテージ品のみが集められ、平日の限られた日にしか空いていない店舗(というか倉庫?)です。感想はというと、控えめに言って「宝の山」でした…!

入り口の様子
入り口の様子
店内の様子
店内の様子
店内には北欧ヴィンテージ好き垂涎の商品の山
北欧ヴィンテージ好き垂涎の商品が整然と並んでいる

Stool 60のビンテージ品もたくさん
Stool 60のビンテージ品もたくさん
ガラス製品などの小物類も
ガラス製品などの小物類も

ヘルシンキを再訪できたときには、ぜひまた行きたいお店です。

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