vol.48 自治体と市民が主役の時代へ

公開日:2026.1.18 最終更新日時:2026.1.18

いごこちの科学 NEXT ハウス

さらなる省エネ・省CO₂が住宅の重要なテーマとなる寒冷地。 本企画は、独自の視点から住宅性能研究の最前線を開いている、東京大学の気鋭の研究者・前 真之准教授に、「いごこちの科学」をテーマに、住まいの快適性能について解き明かしていただきます。 シーズン1に続く第2弾として2015年からは、それまでの連載の発展形「いごこちの科学 NEXT ハウス」としてリニューアル。
「北海道・寒冷地の住宅実例から考える室内環境について」をテーマに、断熱、開口部、蓄熱など、さまざまな視点から寒冷地における室内環境の改善ポイントを解説しています。東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻・准教授 前 真之 (まえ・まさゆき)東京大学大学院工学系研究科
建築学専攻・准教授
前 真之 (まえ・まさゆき)


国交省のGX志向型住宅に続いて、経産省もGX ZEHを発表しました。国が現状のZEHやZEH水準を超えた性能の普及を目指す中で、熱意のある地方自治体や市民によるさらなる取り組みも広がっています。今回は「カーボンゼローカル大賞」と「グッドデザイン賞」から、住宅・建築のさらなる省エネに向けた最新事例を取り上げます。

GX志向型住宅の衝撃

2025年の住宅をめぐる一番のホットニュースは、なんといってもGX志向型住宅の補助事業でしょう。これまでかたくなに断熱等級5・太陽光発電不要の「ZEH水準」にこだわってきた国土交通省が、GX(グリーン・トランスフォーメーション)の実現に向けて、断熱等級6・太陽光発電必須のGX志向型住宅を突然発表したことは、この連載のvol.45で取り上げたように大きな衝撃でした。

2027年からZEHもGX

今れまでネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)を推進してきた経産省も負けじと、この9月に新たに「GX ZEH」を発表しました(図1)。

図1 現ZEHからGX ZEHへのレベルアップで断熱等級6が当たり前に
9月に発表されたGX ZEHでは、現在のZEHから断熱・省エネ・再エネの基準が大幅に強化されています。
2027年度の正式な切り替えを待つことなく、早々に多くの新築住宅がGXに対応していくことが期待されます。

現ZEHの断熱等級5・省エネ20%から、GX ZEHでは断熱等級6・省エネ35%と大幅にレベルアップ。太陽光発電については現ZEHでも必須ですが、GX ZEH+では必要容量が15%増しとなり、さらに高度エネマネ(HEMS)や蓄電池なども必須となります。現ZEHからGX ZEHへの切り替わりは2027年度に予定されていますが、早々に新築住宅のGX化が進んでいくことが期待されます。

ZEH水準は時代遅れに

住宅のGX化が急速に進む中で、GXに満たないZEH水準の住宅の価値は急速に低下しています。11月に公表された財務省の「社会資本整備」の方針においても、カーボンニュートラル実現のためにはGXレベルの普及が必要と認める一方、ZEH水準を補助する必要性は低下していると明言しています(図2)。

図2 財務省もZEH水準への補助見直しを明言
財務省は社会資本整備の方針として、カーボンニュートラル実現のためにGX志向型住宅への補助が必要と認める一方で、低レベルのZEH水準への補助は必要なくなっていると明言しています。
国交省がかたくなにこだわってきたZEH水準は、早くも時代遅れとなってしまったのです。
出典:財務省 社会資本整備 2025年11月7日

特に大手の住宅事業者は大概の物件で断熱等級5を実現しており、すでに「当たり前」となっている中で、いまさら国費で補助する必要がないのは当然といえます。

遅すぎた断熱等級6

2025年4月に適合義務化された断熱等級4はもとより、遅くとも2030年までに適合義務化が予定されているZEH水準の断熱等級5では、健康・快適で電気代も安心な暮らしを実現するにはまったく力不足であることは、この連載で繰り返し述べてきたとおりです。

健康・快適・安心な暮らしを実現するための必須ラインである断熱等級6が、GX化により普及することは望ましいことです。一方で、省エネ基準やZEH水準の住宅を購入した人は、早々と時代遅れの家に住むことになってしまいます。  

断熱等級6・7が定義されたのは、たった3年前の2022年10月。国交省をはじめとする国の政策の遅れが日本の住宅の進化を停滞させ、多くの国民が時代遅れの家で寒さ・暑さと電気代の高さに苦しんでいることは、厳しく論じられなければなりません。

国の補助金頼みも限界に

また、省エネ住宅を普及させるための国の施策が、もっぱら補助金なのも大きな問題です。GX志向型住宅は、1住戸あたり160万円と非常に魅力的な補助金額もあってか大人気に。応募が殺到して総額500億円の予算を早くも7月に使い切ってしまい、あてにしていた住宅事業者やお施主様は途方に暮れることとなりました。  

国の補助金は、使える期間などの条件が厳しく、工期が短いハウスメーカーに有利な一方で、工期が長くなる地域工務店は利用が困難です。特定の条件にあった新築住宅にだけ国民の血税から手厚く補助をすることは、公平性の面からも大いに問題があります。

主役は自治体と市民に

とはいえ、国の政策はなにかと小回りが利かないもの。しばらくは補助金頼みの政策が続くでしょう。また断熱等級6にしても気密の規定がないなど、実は不十分な面が多くありますが、国がGX ZEHを超えた性能を追加で定義することは当面なさそうです。  

国の政策が一段落となる中、今後の主役として期待されるのが、熱意ある地方自治体の政策と市民の活動です。

その最新事例について、「カーボンゼローカル大賞」と「グッドデザイン賞」から最新事例を見てみましょう。  

Related articles関連記事