日本とちょっと違うかも?「フィンランドの図書館」の魅力とは
フィンランドに半年間滞在していたReplanスタッフがお届けする、北欧の暮らしや建築のこと。
目次
こんにちは。昨年半年間、ワーキングホリデーのビザを活用してフィンランドへ行っていた営業部のTです。
フィンランドでの暮らしで「図書館」について感じたことがあります。それは図書館が生活の中で普通に存在する「第三のスペース」になっている、ということです。家や会社、学校とは別の日常空間として多くの方が利用しているのです。
フィンランドでは数多くの街を訪れました。その行く先々で図書館に立ち寄ったのですが、それぞれ個性はあるものの、総じて居心地が良くて、年齢性別を問わずに読書や勉強以外の目的で来ている人たちもたくさんいました。
そこで今回は訪問したいくつもの図書館を通して私が感じた、住民が自然と足を運んでしまう「フィンランドの図書館らしさ」を、いくつかの視点でご紹介します。

①光が満ちる、静けさのデザイン
まず特筆すべきは「光の美しさ」。北欧の長い冬では陽の光が貴重なので、建築設計においては「自然光とのつき合い方」をとても大切にしています。図書館は特に「本を読む場所」として、光のとり入れ方が丁寧に考えられている印象を受けました。
大きな開口から射し込むやわらかな光は、単に明るさを確保するだけでなく、空間にリズムを与え、空間に居る人の気持ちまで緩やかに整えてくれます。
例えば「ヘルシンキ中央図書館 Oodi(オーディ)」では、波打つ屋根の上、3階のリーディングルームが空中に浮かんでいるかのような構成になっていて、全面ガラス張りの壁からは街のパノラマビューが一望できます。

また「ヘルシンキ大学 国立図書館」でも光についての強烈な体験が。ネオクラシック様式の荘厳な建物の中に入ると、天窓から射し込む光がアーチ型の天井に反射して、まるで礼拝堂のような神聖さを感じさせます。この場に立った瞬間、光はただ「見えるため」にあるのではなく、「集中するため」や「静けさを共有するため」にもあるのだと気づかされました。



②「機能美」が際立つ本の並べ方
どの図書館でも感じたのが、「本棚のレイアウトの見やすさ」と「ジャンル分けの明確さ」です。フィンランド語はもちろん、スウェーデン語や英語の書籍も多く、利用者の多様性を前提に設計されていることが分かります。

特徴的なのは、単にジャンルで分けるだけでなく、「使い方」や「利用者のライフステージ」に応じた構成になっている点です。
例えば「トゥルク市立図書館」は、歴史的建築とモダンな新館からなる建物ですが、どこにいても本にたどり着くプロセスが快適で、迷うことがありません。どこから入っても自然と本が目に入ってくる設計になっています。この「機能美」が、空間としての居心地の良さや図書館利用のハードルを下げることにつながっているように思います。

③平日・休日関係なく、利用者が多い
平日・休日を問わない図書館利用者の多さに、最初は少し驚かされました。ただし人がたくさんいるからといってうるさいわけではありません。各自が適度な距離感を保ち、マナーを守って思い思いの時間を過ごしていて、その様子もまた印象的でした。

「ヒュビンカー図書館」では、朝のオープンからすでに多くの市民が読書や勉強を始めており、午後には小さな子ども連れの家族や高齢者の姿も見られます。車椅子利用者が行き来しやすいスロープや広めの通路、視覚的に分かりやすい案内表示など、誰もが気軽にアクセスできるような空気感なのは、「開かれた設計」があるからこそだと感じました。


④「本を読む・借りる」以外の図書館の使い方
フィンランドの図書館のおもしろさは、「本を読む・借りる」という、僕たちが思う本来の枠を軽々と超えているところにもあります。
例えば「ヘルシンキ中央図書館 Oodi」は、楽器や調理器具の貸し出し、3Dプリンターが使える工房、無料で使える会議室や防音ブース、さらには演劇のリハーサル空間などが備わっていて、市民に広く利用されています。


「オウルンキュラ図書館」のような郊外の図書館でも、地域に開かれた催しやワークショップが頻繁に行われていたり、子どもたちのスペースが充実していたりと、住民のためのさまざまな工夫やイベントが活発に行われています。

こういった環境づくりによって、図書館は「静かにしなさい」と言われる場所ではなく、「ここにいていい」と思える場所になり、子どもたちにとっての「楽しい」居場所になっているのかもしれません。フィンランドでは、図書館はまさに「文化のインフラ」として根付いているように感じました。
⑤建築としての美しさと意匠性
フィンランドの図書館は、機能的であると同時に、建築それ自体が美しく洗練されています。理由の一つは、設計者が「使う人」を強く意識して設計しているからではないか、と個人的には感じます。
存在感を放つ外観、手に触れる素材の温かみ、有機的な曲線を取り入れた階段や天井、グリーンの配置、そして光の生かし方…。建築物としての美しさも「来たくなる理由」「長居したくなる理由」かもしれません。


「ヘルシンキ中央図書館 Oodi」に代表されるように、フィンランドでは現代建築と都市空間の融合が進んでいて、「ランドマークとしての図書館」が各都市に存在しています。その一方で、「トゥルク市立図書館」のように、歴史的建築が丁寧に修復・増築され、過去と現在が連続するような空間も大切にされているケースもあります。
いずれも図書館が市民に身近な存在であることに変わりなく、そうした建築のあり方が、図書館という空間の質と利用者の満足度を底上げしているように感じられました。
「未来の公共空間」としてのヒント

「公共の場」というと、どこか抑制や我慢を強いられる場所というイメージが、日本ではまだ根強いかもしれません。しかしフィンランドの図書館を見ていると、公共空間とは「人々が自由でいられる場所」であり、「知的な活動を気負いなくできる場所」であるということが、ごく自然な前提として存在しています。
この国では図書館は、ただの「貸出の場」ではありません。静けさと活気が共存し、個と共同体のバランスが取れた、いわば「知の広場」が広がっています。

私たちの「本」という確度の高い情報源への信頼は、今も変わりません。都市における図書館の在り方を考えることは、その社会の「知の民主化」の進み具合を知ることにもつながります。その意味でもフィンランドの図書館は、「未来の公共空間のあり方を教えてくれる、格好のモデル」なのかもしれません。
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