必要な広さの中で質を愛でる。「ミニマルリッチ」な平屋の実例集
Replanが教える家づくりで参考にしたいアイデアの数々。
目次
家づくりにおいて「コストバランス」が重要視される今、あえて広さを追わず、質の比重を高めることで心豊かな住空間を実現する「ミニマルリッチ」という選択肢が注目されています。
今回は「ミニマルリッチ」を叶える条件と、限られた面積ながらこだわりを凝縮して上質な暮らしを叶えた、今人気のコンパクトな注文住宅の平屋の実例を、リプランの過去の取材例から4つご紹介します。
「ミニマルリッチ」を叶える4つの条件
「ミニマル」とは、本当に必要なものだけでシンプルに構成すること。「リッチ」とは「豊かで満たされること」。「ミニマルリッチな家づくり」を実現するためには、主に次の4つの条件があります。
条件1|「触る場所」の質を上げる

家づくり全体のコストを抑えつつ上質さを生み出す鍵は、予算のメリハリにあります。すべての建材を高級品にする必要はありません。フローリングやドアノブ、スイッチプレート、階段の手すりなど、日々の生活で「毎日手が触れる場所」の質感に予算を集中させましょう。
「視覚」だけでなく「触覚」を通じて伝わる本物の素材感は、空間全体の印象を格上げし、住まい手に確かな満足感と小さな喜びをもたらしてくれます。
条件2|収納は「隠す」から「絞る」へ

コンパクトな平屋で美しさを保つには、「収納の在り方」を見直すことが不可欠です。単に「モノを隠すためのスペース」を増やすのではなく、自分にとって本当に必要な持ち物を厳選し、収納の数そのものを「絞る」設計にシフトします。
また壁面と一体化した機能的な造作収納などを取り入れて視覚的なノイズを徹底的に消し去ることで、限られた面積の中に美術館のような凛とした静寂と広がりが生まれます。
条件3|「経年美化」する素材選び

広さをコンパクトにした分、素材選びにこだわる。それも「ミニマルリッチ」な家づくりには不可欠な条件です。
無垢の床材、珪藻土や漆喰の塗り壁など、本物の自然素材の魅力は、時の経過とともに深まっていきます。年月を経て味わい深い色ツヤを帯び、傷すらも暮らしの確かな記憶として美しくなじむその様は、まさに「経年美化」。自分たちの住まいを慈しむ心を育み、時間が生み出す贅沢を味あわせてくれます。
条件4|「可変性(スケルトン・インフィル)」を意識

コンパクトな平屋を窮屈に感じさせない秘訣は、「最初から空間の役割を決めて細かく仕切らないこと」にあります。
柱や外壁といった構造(スケルトン)は強固につくりつつ、内部(インフィル)はライフステージに応じて柔軟に変更できる「余白」を残しておきます。
動かせる収納やカーテンなどを間仕切り壁の代わりにすると家族の成長や変化に対応しやすく、将来のリセールを含め、平屋の可能性が広がります。
ミニマルリッチな平屋の実例集
CASE1|10坪|極小の平屋と畑で紡ぐ 丁寧な日常
札幌市・丸田さん宅 夫婦40代
延床面積 33.54㎡(約10坪)

住宅街の旗竿地。かつて畑として使っていたこの場所に、建築家の丸田知明さんが夫婦のために建てたのは、わずか10坪の平屋です。「住まいはもっと身軽でいい」と、できるだけ荷物を少なくし、ローンを組まずに管理しやすいサイズを念頭に設計しました。
建物自体はコンパクトながら、高い天井と床レベルを半分下げたダイニングにより、空間は驚くほどのびやか。暮らしに必要な機能が、適正なサイズで適切にレイアウトされ、要所にあしらった真鍮やテラゾー、ご自身でランダムに張ったという異なる樹種の無垢フローリングなどの素材感が、空間に上質な奥行きを与えています。



暮らし始めてからも、キッチンの引き出しをDIYしたり、床にオイルを塗ったりと、住まいに手をかけることを愉しんでいるというご夫妻。不要なものを削ぎ落としたからこそ手に入った、心安らぐミニマルリッチな暮らしがここにあります。
設計 丸田知明建築設計事務所 <Replan北海道 vol.131>
CASE2|22坪|趣味を愉しむ 山小屋のような平屋
函館市・Fさん宅 夫婦40代、子ども1人
延床面積 74.00㎡(約22坪)

関東から故郷の函館へUターンしたFさんご夫妻は、やがて迎える夫婦二人の暮らしも見据え、実家の隣の狭小地にわずか22坪の平屋を建てました。「以前住んでいたアパートのように、いつでも家族がぎゅっと集まる場所で在り続けたい」という温かな想いが、家づくりの原点です。
間仕切り壁がほとんどないおおらかな一室空間の魅力は、美しい木質ルーバーの天井と、天窓から優しく降り注ぐ自然光。実家の庭を借景とした緑が気持ちのいい窓辺には長い造作ベンチを設け、家族やゲストとの心地よい距離感を生み出しています。



ミニマルリッチなポイントは、大好きなアウトドアが日常に溶け込んでいること。広めの玄関土間に据えた薪ストーブ、天井の梁に美しく収まるカヤックやハンモックが暮らしを彩ります。持ち物を最小限に厳選したからこそ引き立つ、趣味を心から愉しめるベースキャンプのような住まいです。
設計 ミズタニテツヒロ建築設計 <Replan北海道 vol.117>
CASE3|23坪|心地よさをデザインした 八角形の平屋
南幌町・Oさん宅 夫婦30代・20代
延床面積:77.70㎡(約23坪)※カーポートを除く

札幌を離れ、自然豊かな南幌町へ移り住んだOさんご夫妻が暮らすのは、予算と将来を見据えて建てた23坪の平屋です。家づくりにあたって建築家が導き出したのは、美しい街並みへの配慮と、マオイ丘陵などの大自然を享受することを両立する八角形のプランでした。
外観は街の並びに真っすぐ整えつつ、室内は景色に正対するよう角度を振る巧みな設計。3mの天井高や高低差を生かした立体的な空間構成により、面積以上の広がりを感じられます。



この平屋が叶えたミニマルリッチな豊かさ。その一つは、内と外を密接につなぐ3つのテラスと開口計画にあります。周囲の視線を気にせずに防風林を眺められるプライベートなコートテラスと大きな窓は、暮らしの領域を屋外まで広げてくれます。
他にもシンプルで上品な素材使いや薪ストーブなど、コンパクトな中に心地よさや豊かさのヒントが散りばめられた住まいです。
設計 エスエーデザインオフィス一級建築士事務所 <Replan北海道 vol.142>
CASE4|29坪|地域の人と 素材の力を宿す家
下川町・Tさん宅 夫婦40代、子ども1人
延床面積 98.54㎡(約29坪)

町の約9割を森林が占める下川町で林業会社を営むTさんは、地元の循環型人工林で育まれた「町産材」を生かすことを大前提に家づくりに取り組みました。
29坪のシンプルな切妻屋根の平屋は、廊下をなくして居住スペースを最大限に広げた効率的な動線設計が特徴。スノーボードの手入れや薪ストーブの炎を楽しめる広い土間空間がLDKと一体となり、勾配天井も相まって実面積以上の開放感をもたらしています。



この家におけるミニマルリッチな価値は、コストを抑えながら地域の職人の手仕事で、質感や風合いといった本来のポテンシャルを最大限に表現した「素材使い」に見い出せます。
一般流通用の町産材を用いながらも、設計デザインの工夫や施工のひと手間を加えることで高い意匠性を実現。下川町産の土を用いた表情豊かな土壁やナラの無垢床、端正な造作家具が、住まいと暮らしの質を高めています。
設計 HOUSE&HOUSE一級建築士事務所 <Replan北海道 vol.149>
このように住まいの広さ以上に「質」にフォーカスすることで、豊かな暮らしの場を実現できるケースもあります。ぜひ家づくりのプロである建築家や工務店の力を借りながら、納得の家づくりを目指してくださいね。
(文 Replan編集部)
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