まずはQ1.0住宅を建てよう

私は、今から30数年前に省エネで快適な全室暖房の家を高断熱・高気密住宅と名付け、こうした家づくりを推進しようと全国に呼びかけ始めました。断熱レベルは当時の一般住宅の暖房費を増やさずに済むレベル以上を目指したのです。その後平成11年に、次世代住宅省エネ基準が制定され、本州以南では私の目指したレベルより低いレベルになってしまいました。

そこで、10数年前、それまでより遥かに高いレベルの省エネ住宅を、できるだけローコストで建設しようとして、今度は「Q1.0住宅」の建設推進を始めたのです。一般住宅の半分以下のエネルギーで全室暖房を可能にしようとしたのですが、日本には戸建て住宅だけの暖房エネルギー消費の調査データがなく、やむを得ずQ1.0住宅の目標性能を、省エネ基準住宅を基準にして地域によって55~40%以下で済む住宅と規定しました。これをレベル1として、レベル1~4までを決めています。レベル3では、省エネ基準住宅より坪単価で3~4万円ほど高くなりますが、省エネ基準住宅に比べて北海道で35%以下、北東北で30%以下、南東北では25%以下、それ以南では20%以下にもなる、高いレベルの省エネ住宅です。

私は、新住協の設計事務所と工務店会員に、2020年には全棟Q1.0住宅で家づくりを進めようと呼びかけています。

コストアップの克服〜暖房設備費を削減できるか

ここで問題になるのが、Q1.0住宅のコストアップです。断熱材を厚くしたり、窓を高性能にしたりするにはどうしてもお金がかかります。暖房費が少なくなる分で回収できます。しかし、地域によって異なりますが20~30年ぐらいはかかるでしょう。省エネ基準住宅より快適性が遥かに向上するのですが、これはお金で勘定はできません。Q1.0住宅を普及していくには、やはり最初の住宅建設費の上昇をできるだけ抑えなければなりません。

このために、工法の改良、材料の見直しなどいろいろな研究開発を行って、ようやく、Q1.0住宅レベル1で坪2万円、レベル3で坪3~4万円の工事費アップで済ませられるところまできました。連載第9回10回11回で紹介した総2階建てのプロトタイププランの開発もコストダウンの強力な手法だと考えています。他にもまだいろいろあるのですが、その一つが暖房設備のコストダウンです。

高断熱住宅やQ1.0住宅の快適性は、住宅の断熱性能が高いことが必要条件ですが、暖房設備のデザイン(暖房設計)によっても大きく左右されます。Q1.0住宅はこれまでの省エネ基準レベルの住宅より熱損失が半分近く小さくなりますから、より小さな暖房設備で済みます。これを利用して、快適性を損なわずに、暖房設備のコストダウンができないかというのが、本論のテーマです。