冬の結露は窓のSOS信号

冬の結露は窓のSOS信号

窓の断熱不足を見つける一番簡単な方法は、「結露」の有無をチェックすることです(図7)。結露は、「その部位の温度が低すぎる(断熱が足りない)」「室内の湿度が発生しすぎる」ことを表します。断熱・換気シンドロームの代表的な初期症状と言えます。

図7 結露は窓と換気のSOS
図7 結露は窓と換気のSOS
サーモカメラをもっていなくても結露が発生していれば、断熱不足と湿度の排気不良が起きていることが分かります。いつものことと放置せず原因を調べて対策をすることが、建物の寿命を延ばすことにもつながります。

サッシとガラスの組み合わせが断熱性の鍵

図8に、主だった窓のサッシとガラスの組み合わせを示しました。アルミサッシのあまりにも高い熱伝導を減らすため、樹脂と組み合わせた「半プラ」が登場しました。現在でも、アルミと半プラが市場の8割を占めています。さらに断熱性を高めるため、金属をできるだけ使わずに熱伝導率の低い樹脂や木を使ったサッシが登場してきています。最近の木製サッシは格段に加工精度が上がり、木のもともと低い熱伝導率と相まって高い断熱・気密性能を持つようになってきています。

図8 窓のガラスとフレームが断熱性を決める
図8 窓のガラスとフレームが断熱性を決める
ガラスとフレームの種類により、熱の逃げやすさを示す「熱貫流率Uw値」は変化します。日本のラベリング制度は4つ星でも2.33以下と要求性能が低く、現状でもアルミかアルミ+樹脂(通称:半プラ)が主流です。住宅の断熱性能でリードするドイツでは1.3以下でなければ販売することができず、木やフル樹脂が主流です。

ガラスもペアガラスからさらに断熱性能を上げるため、低放射な金属膜でガラス面をコーティングした「Low-E(ローイー)」が登場しました。低放射が断熱に役立つのは、高温のガラスからの赤外線照射を防いでいるからです(図9・10)。現在では、住宅用の7割がこのLow-E・ペアガラスとなっています。初期のLow-Eガラスは緑色のものが多かったのですが、今では自然な色合いのものも増えています。

図9 ガラスはLow-Eコーティングで断熱性能が上がる
図9 ガラスはLow-Eコーティングで断熱性能が上がる
少しマニアックですが、Low-Eコーティングはコーティングの材質や層数・位置などから「日射遮蔽型」と「断熱型」に大別されます。高温のガラスからの遠赤外線の放出を抑制することで、放射による熱の移動を低減し断熱効果を発揮します。
図10 赤外線カメラもだまされる? Low-Eマジックのトリック
図10 赤外線カメラもだまされる? Low-Eマジックのトリック
熱いお湯が入っているピカピカのステンレスポットを赤外線カメラで見たものです。ピカピカの金属面は赤外線の放射を抑制するので、温度が低いと勘違いしてしまうのです。ガラスのLow-Eコーティングも同じ低放射効果で、放射による熱ロスを防ぎます。

さらなる断熱を求めて、ガラス間の中空層にただの空気ではなく、より分子が重くて対流や熱伝導が悪いアルゴン(Ar)ガスやクリプトン(Kr)ガスを封入するようになりました。さらに薄くするために、真空層を用いた製品も登場しています。さらにガラス枚数も、2枚のペアからトリプルに移行しつつあります。

ガラスの改善は簡単に見えますが、実はとても難しいものです。実はガラスは熱がこもって温度が上がりすぎると、内部のごくわずかな不純物が原因で「熱割れ」が起こります(図11)。現在の高断熱ガラスの進歩は、ガラスの素材を含めた技術改善によって成し遂げられているのです。

図11 熱がこもりすぎるとガラスは割れる
図11 熱がこもりすぎるとガラスは割れる
中空層の断熱性を上げるほど熱は移動しにくくなります。しかし中空層に挟まれたガラスが日射などで温度が上がりすぎると、わずかな不純物から生じる熱のゆがみにより、「熱割れ」が生じます。高断熱で安全なガラスをつくるのは、とても難しいことなのです。

次のページ 窓の断熱向上が家のカタチを変える