第42回「コンパクト総2階建てQ1.0住宅デザインマニュアル」

公開日:2026.1.16 最終更新日時:2026.1.16

30年以上にわたって在来木造住宅の高断熱・高気密化を研究し、性能とデザインは両立できることを説き続けてきた鎌田紀彦氏。高断熱・高気密住宅の建築コストの適正化にも取り組み、現在、暖房エネルギーが1/2〜1/4で済むような高性能住宅が、普通の人でも十分手の届く価格でつくれるようになっています。 この連載では、氏のこれまでの活動の中で設計した住宅、あるいは氏と共に新住協を支えている会員の設計などを紹介しながら、そこから生まれた新しい技術や、高断熱・高気密住宅ならではのデザイン、計画手法を紹介していきます。

この1年、執筆の作業をしてきた「Q1.0住宅デザインマニュアル」がようやく刊行されることになりました。デザインマニュアルと題していますが、Q1.0住宅全般のデザインに関するものではなく、高性能なQ1.0住宅レベル-3をローコストに建てられるように、コンパクト総2階建て住宅のデザインに絞り込んだ内容になっています。設計事務所、工務店向けの本ですが、一般の家を建てようとする方にも十分興味を持ってお読みいただけると思います。本号ではその内容を簡単にご紹介したいと思います。

これからの住宅はQ1.0住宅レベル-3以上の性能で建てよう

新住協では、会員の設計事務所や工務店に、すべての住宅をQ1.0住宅レベル-3以上の熱性能で建てようと呼びかけています。国の省エネ基準等級7の住宅は、断熱工事にお金がかかりすぎて、コストパーフォーマンスが悪すぎます。  

Q1.0住宅レベル-3〜4のコストパーフォーマンスがいいことを、本連載第35回「高断熱化の工事費増、コスパが高いのはQ1.0住宅レベル−3~4」で、実際のコスト計算に基づき実証しました。30年間の暖冷房費と断熱工事費増分を足し合わせた金額が、寒冷地ではQ1.0住宅レベル-3~4で最も少なくなるのです。  

しかし、Q1.0住宅レベル-3でもかなりの断熱工事費がかかります。最近の建築工事費の高騰や宅地価格の上昇などから、住宅を建てるコストは急上昇しています。また、地方都市でも土地の狭小化が進み住宅の設計が難しくなっています。こうした中で、すべての家をQ1.0住宅レベル-3以上で建てるとなると、予算が厳しい住宅ではとても難しくなります。 

私たちはこれに対処すべく、ローコストな断熱工法を開発したり、QPEXという暖冷房負荷計算プログラムを使って、最も断熱工事費が安くなる断熱工法を採用したりしています。しかし一番コストに大きく係わるのは、住宅のプランニングです。平屋の住宅が最も坪単価が高く、総2階建て住宅が最も坪単価が安くなるのです。また、総2階建て住宅が最も床面積あたりの外表面積が小さくなるため、断熱仕様のレベルを下げ、断熱工事費のコストダウンが可能になります(連載第39回「人気の平屋建て住宅はとても贅沢」参照)。

平屋建て住宅の人気と総2階建て住宅

最近は、平屋建て住宅の人気が高いといいます。しかも、足腰が弱くなった高齢者が平屋建てに住みたいと思うのは当然ですが、若い人たちにも人気が高いというのです。若い世代の年収は少ないのですから、坪単価が高くなる平屋建て住宅を望むというのは不思議なことです。さらに、この住宅をQ1.0住宅レベル-3以上で建てるとなると、断熱工事費増分はびっくりするほど高くなります。

私たちはこれまで、総2階建て住宅のプロトタイプの開発に力を注いできました。ローコストで性能も高く、暮らしやすい空間構成とデザインのいいプロトタイププランを示して、会員や家を建てようとする人たちの参考にしてほしかったのです。例えば2.5×6.0間の総2階建て住宅(30坪)や、4.0×4.0間の総2階建て住宅(32坪)で、この連載でも5〜6回にわたってご紹介してきました。  

しかし、ここでふと気づいたのは、これらの住宅では大きすぎて、住宅の総工事費が高くなり、若い人たちの手が届かなくなっているのではないかということです。最近の新築住宅の延床面積が20数坪以下になっているとも聞きます。いくら坪単価が安くても、大きな住宅の総工事費は高くなります。20坪の平屋と30坪の総2階建て住宅では、平屋の方が安いのかもしれません。

さらにコンパクトな総2階建て住宅を目指した「Q1.0住宅デザインマニュアル」

そこで私たちは、もっとコンパクトな総2階建て住宅のプランニングを試みました。それが「Q1.0住宅デザインマニュアル」の狙いです。総2階建て住宅の方が、狭小宅地に配置するのにも自由度が高く、駐車スペースや庭が広く取れます。  

Q1.0住宅デザインマニュアル 市ヶ谷出版社¥3,300(税込)

しかし、小さな総2階建て住宅は倉庫みたいになってしまい、デザインはあまりかっこよく見えません。平屋建ての方が横に長くかっこいいのです。

そこで、コンパクト総2階建て住宅を、かっこいいデザインにまとめるための「コツ」を第4章にまとめています。この章は、新住協理事の鈴木信弘さん(鈴木アトリエ主宰・神奈川大学教授)に担当してもらいました。第1章では、コンパクト総2階建て住宅の利点について、第2章では、コンパクト総2階建て住宅の敷地への配置計画について、そして第3章が、コンパクト総2階建て住宅のプランニングと題して、32坪以下の総2階建て住宅のプラン64個を集めたプラン集になっています。  

さらに第5章は、コンパクト総2階建て住宅の詳細設計と題して、Q1.0住宅レベル-3以上の熱性能を実現するための各部の断熱工法の解説です。「Q1.0住宅設計・施工マニュアル2020」の内容を最新情報に書き換えての解説を行っています。

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