1階サニタリーのA・B案 2階サニタリーのC・D案

30坪の総2階建て住宅は、1階の面積が15坪となり、ここにサニタリーを置くとLDKや収納がどうしても狭くなります。寝室は2階にあるのですから、サニタリーは2階に置いたほうが生活上も便利だと私は考えているのですが、議論をしてみると別の考え方も出てきました。

一番の問題点は、この家に住み続けて高齢になり2階に上れなくなり、リビングを改造して寝室とする必要が生じたとき、2階にサニタリーでは問題だとする意見です。これには将来エレベーターを設置する方法もあるわけで、決定的な条件とはなりません。どうも議論に参加した人の経験から意見がまとまらなかったということだと思います。

図-3 B案 平面図
図-3 B案 平面図

1階サニタリーを採用したA・B案の違いは吹き抜けの大きさにあります。B案が最初の案で、南側に大きな吹き抜けを持っていて、将来子ども部屋を増築するときにこの吹き抜けを利用します。連載第5回でこの実例を紹介しましたが、天井の高い大きな空間が魅力です。

しかし、ここで構造上の問題が生じました。建築基準法では2階床の水平耐力はチェックされないため、このようなプランの建物は一応建設可能ですが、品確法の構造等級を上げると、このような大きな吹き抜けは構造上持たない計算になるということです。これを考慮して一応A案を代表としています。1階サニタリーでも問題なく納まったようです。空間的には玄関から南に延びる細長い吹き抜けが自慢です。

この細長住宅は、住宅の横に駐車スペースを設け、建物を北側一杯に寄せられるのがメリットでしたが、軽自動車分だけ奥に引っ込める必要が生じました。庭が少し狭くなりました。車が1台で良ければ、北側に建物を寄せてもっと庭が広くなります。

C・D案は2階にサニタリーを設置した案です。プライベートなサニタリーなのでトイレと洗面脱衣を一つのスペースにしています。1階のダイニング・キッチンとリビングを別に取り、それぞれがゆったりとしたスペースになっています。A~D案ともに2階のホールを室内物干しスペースと考えています。

図-4 C案 平面図
図-4 C案 平面図
図-5 D案 平面図
図-5 D案 平面図

このあとの作業

私たちは、このプロトタイプ開発を単なるプランニングに終わらせず、屋根の形、開口部のデザイン、内外装デザインなどのバリエーションを設計しながら、会員各社の見積書を持ち寄り細かく検討した上で、新住協としてユーザーに価格も含めた提案をしていきたいと考えています。構造等級2~3等級、熱性能はQ1.0住宅レベル1~4の各グレードについてもきちんと計算し、仕様を決めてそれぞれの標準的な価格をユーザーに示すことができるようにしたいと考えています。

建物の間口寸法が3間~4間のプランもつくる必要があります。そして、今回は北側道路の敷地ですが南側道路のプランも必要です。

このような詳細なプロトタイプを開発することによって、ユーザーの皆さんは、自分の予算に合わせて最も性能レベルの高い住宅仕様を選ぶことができます。構造計算書などは新住協でつくり、会員がそれを利用できますからその分の費用は安く済みます。

元々、狭い宅地にコンパクトな住宅をつくることは、とても制約が多く、設計にも時間がかかりますが、その時間も短くて済むでしょう。何よりも衆知を集めて、考え抜いてつくられたグッドデザインの住宅を、リーズナブルな価格で手に入れることができるのが最大のメリットだと私は考えています。