おススメは内窓とカバー工法

断熱強化のための窓リノベの方法は、大きく分けて図5の4種類があります。

図5 窓の断熱改修方法とそれぞれの長所・短所
YKK AP体感ショールームにて筆者撮影

このうち、「ガラス交換」は改善効果が限定的で、「外窓交換(はつり工法)」は工事が大がかりになる欠点があります。十分な断熱効果を得ながら工事のコストと期間を抑えるのであれば、「内窓設置」と「外窓交換(カバー工法)」がおすすめです。いずれも大きな断熱効果を得ることができ、補助金をもらえるAグレードはもちろん、Sグレード以上の達成も十分に可能です。この窓リノベの補助は本当にお得なので、窓まわりの寒さが気になる人には、絶対におすすめです。

省エネ給湯機の注目は 太陽光の自家消費

一番エネルギーを消費する設備、給湯機の省エネ型を補助する「給湯省エネ事業」。ガスでオンサイト発電を行う燃料電池も補助対象ですが、注目はヒートポンプを利用した貯湯式の給湯機です(図6)。

図6 給湯省エネ事業の補助対象給湯機

太陽光発電は電気代低減に欠かせない強力なアイテムですが、最近では売電単価の低下・買電単価の上昇により、なるべく自分で使う「自家消費」が有利になっています。

ヒートポンプ給湯機の元祖である「エコキュート」は2001年の登場から、原子力発電の電力利用を目的として深夜時間帯の沸き上げがもっぱらでした。その後登場した「ハイブリッド給湯機」は、主に昼間に沸き上げることから、太陽光の自家消費を積極的にアピールしてきました。最近になって、エコキュートでも昼間に太陽光の電気で沸き上げるタイプ、その名も「おひさまエコキュート」が登場し、注目を集めています。

おひさまエコキュート 専用メニューも用意

従来のエコキュートは「夜間蓄熱式機器」として、深夜時間帯が割安な時間帯別料金プラン(スマートライフなど)が選択されていましたが、今回、東京電力は、おひさまエコキュートの登場とあわせて専用メニュー「くらし上手」を導入しました。

両プランの価格を図7Aに示します。

図7A

時間帯別料金は昼と深夜で単価が違いますが、おひさまエコキュート専用プランでは時間帯の差がなく共通で、昼は時間帯別プランよりお得です。月120kWhまでは定額ですが、一般的なオール電化であれば余裕で超える値なので問題ないでしょう。

この専用プランはどのくらいお得なのか、試算したものを図7Bに示しました。

図7B おひさまエコキュートで太陽光の電気を自家消費すればコストメリット大
建築物省エネ法の計算方法をもとに筆者計算
6地域(東京など)の標準的な戸建て住宅を想定 エコキュート効率3.4 昼間沸き上げ型では給湯エネの半分が太陽光の自家消費になると仮定

専用メニューでさらにお得

太陽光発電がなく、通常の深夜沸き上げエコキュート(EC深夜)で時間帯別プランの電気代は、月平均で17,228円となります。

次に、容量6kWの太陽光発電を載せた②では7,423円となり、オール電化の家でも太陽光発電の効果が大きいことが確認できます。

そして、おひさまエコキュート(EC昼間)で専用プランとした③では、太陽光発電の自家消費増加も相まって、6,745円にまで下がりました。③は②から特別な追加コストなしに、月で約700円、年で8,000円程度の削減ができており、十分にメリットがあるといえます。もちろん、先の「給湯省エネ事業」の対象なので、補助金ゲットもお忘れなく!

ちなみに売電単価は、FIT期間中は割高(2023年開始で16円)ですが、FIT終了後の11年目から割安(東京電力では8.5円)になります。おひさまエコキュートでは、太陽光発電の自家消費を増やし、売電量を減らすので、FIT終了後はさらに有利なのです。

現状では、おひさまエコキュートを積極的に展開している電力事業者は限られますが、太陽光発電と組み合わせた効果的な省エネ手法として、全国に普及していくことが期待されます。

今回は、電気代の最新動向をチェックするとともに、住宅の断熱・省エネの切り札である「窓リノベ」「省エネ給湯機」を見てきました。いずれも空前の額の補助金が用意され、日本でもようやく断熱・省エネの本格的な普及につながることが期待されています。

ただ、ここで心配になるのは補助金の残額。すでに結構使われてしまっているのです…。

この記事を読んで興味を持った人は、乗り遅れてはいけません。すぐに行動して、寒さの解決と電気代低減をお得に実現しましょう!


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