断熱材も入っているのに効いていない

1980年(昭和55年)に、省エネ法が施行され、住宅の断熱材施工が義務づけられました。石油危機を受けての措置です。しかし、これ以降の住宅は、相変わらず冬は寒い住宅にしかなっていないのはみなさんが体験していることです。これを改良したのが高断熱工法です。この連載第7回で詳しく内容を書きましたので、ここでは省きますが、ポイントは壁の空洞部を気流が流れることを防ぐための気流止めを施工することでした。この改良工法を私が提案したのは、もう30年も前のことですが、その後既存住宅も同じく、気流止めを追加することで高断熱住宅にならないかと研究を進めました。

結局、図3のように住宅を改修すれば良いと考えました。問題はこの気流止めに何を使ってどのように施工するかでした。あるとき家で女房が押し入れの布団を圧縮袋に入れているのを見ていて、ひらめいたのが図4~5の方法です。図5の天井と壁が交差する部位では壁の石膏ボードを留める釘が壁の中に突き出していて、ここに何かを充填するのが困難なのですが、壁の空隙の巾の2倍ぐらいの高性能GWを図4のように掃除機で圧縮すると薄い板状になり、これをここに入れてカッターで切り込みを入れると膨らんで図5のようになります。ゆっくり膨らむのですが、途中で上下に揺すると空洞部の隅にもきっちり納まるようです。この方法で住宅を図3のように改修するわけです。

図3 既存住宅の断熱改修工法のイメージ
図3 既存住宅の断熱改修工法のイメージ
図4 圧縮GWの気流止めのつくり方
図4 圧縮GWの気流止めのつくり方
図5 天井部での圧縮GWの気流止めの納まり
図5 天井部での圧縮GWの気流止めの納まり

リフォームは必ず断熱・耐震同時改修を行う

図3の断熱改修工法を開発しながら、各部への圧縮GWの気流止め挿入の方法を検討する中で、同時に筋交い・柱の端部金物の確認と、追加補強工事ができれば耐震改修も同時にできると気づき、北海道の北方建築総合研究所との共同研究を行いその成果として、2007年(平成19年)に「住宅性能向上リフォームマニュアル」が完成し、道内各地で講習会が行われました。このマニュアルは最新版が2冊に分かれ、北総研のホームページからダウンロードできます。ぜひ、リフォームの際には検討してほしいと思います。これからの生活が、安心して快適に暮らせることが、何よりも大事なことなのです。