省エネ基準の改正に向けて仕様基準の提案

このような問題点を解決する方策として、私は最初の省エネ基準制定当時、多くの工務店が採用していた見なし仕様基準に、現行の省エネ基準を全面的に変えてしまうことを提案したいと思います。見なし仕様というのは、住宅各部の断熱性能を、断熱の厚さで決め、それをクリアしていれば省エネ基準に適合していると見なす方式を指します。同時に、今回の脱炭素を受けて、必要なレベルアップを行います。

表3に私の試案を示します。これは、在来木造に限定した案です。現在の外壁の見なし仕様は、HGW16㎏90㎜ですが、在来木造の柱はほとんど105㎜の太さで、それに合わせてGWも105㎜厚の商品に統一されつつありますから、壁にはこれを採用します。これでほとんどコストアップなしで外壁の断熱性能を10数%向上できます。現行の省エネ基準は、断熱材の厚さはまあまあの厚さになっていますから、こうした工夫で若干のレベルアップを図ります。

開口部は、この20年で性能向上が著しいものがあります。5~7地域のアルミサッシを断熱サッシに変え、ガラスはArLowーE16㎜ペアを標準とします。玄関ドアも性能を上げます。これを見なし仕様+αとします。

2×4工法は壁の木材は90㎜ですから、外壁は90㎜として他の部位で補えばいいと思います。要は、工法によってコストに影響せずに一番効率の良い決め方をしようということです。プレハブ住宅などもそれぞれ別に決めます。 

表3 現行省エネ基準見なし仕様と、義務化に向けた基準改定案
図1 地域区分毎の見なし仕様及び改定案のQ値、UA値

この結果、図1のように見なし仕様+αは、本州以南ではHEAT20のG1仕様とあまり変わらなくなります。この仕様に熱交換換気を採用すると、図2の暖房エネルギーでは、ほとんどQ1.0住宅のレベルー1になります。HEAT20はUA値しか規定していませんからこの図に載せることはできません。

図2 見なし仕様と改定案及びQ1.0住宅の暖房エネルギー

図3で全国各地の現行省エネ基準とこの見なし仕様+α住宅の暖房エネルギーを比較します。これによると、この仕様の住宅は現在の一般住宅の暖房エネルギーとほぼ同じになり、全室暖房をしても増エネにならない基準であることがわかります。 

図3 全国主要都市でのモデル住宅の省エネレベル別の暖房エネルギー(20℃全室暖房時)

このように省エネ基準を改定すると、施主にも設計者にも、基準の中身とどのような住宅になるかがとてもわかりやすくなります。難解な基準を助ける簡易法もいらなくなり不公平がなくなります。私は、WEBプログラムと連携して、この見なし仕様住宅を基準として、暖冷房エネルギーとその他の設備のエネルギーが基準を上回って省エネを図る住宅には、その削減分をポイントとして計算し、その合計で省エネ基準の上位基準を示していけばいいと考えています。  

例えば外壁を210㎜に厚くしたら、その分で暖冷房エネルギーがどのくらい削減できるかによってポイントを定め、省エネ基準+aポイントの性能の住宅であるとします。他の部位の断熱の厚さもその増分にポイントを付けます。設備の太陽熱給湯や太陽光発電を設置したら合計bポイントとするなどです。

こうすれば、設備を含むすべてのエネルギーに関して、住宅の省エネ性能を公平に表示することができます。このポイントで、補助金を付ける条件としたり、将来、例えば2030年には省エネ基準を現行+cポイントに引き上げたりするなどが可能になります。そしてその住宅の姿と性能が、誰にでも理解できるものになっていくわけです。