暑さ指数をチェックして熱中症を予防しよう

世界でも厳しい日本の夏。暑さを警戒していないと、簡単に熱中症になってしまいます。環境省は暑さ指数として「湿球黒球温度(WBGT)」を採用し、その温度に応じて警戒を呼びかけています。図6に示すように、暑さ指数は湿球温度7割とグローブ温度3割の合計なので、実質的には湿球温度といっていいものです。

暑さ指数は温度の単位ですが、湿度に応じて気温(乾球温度)から低い値になります。暑さ指数が28℃以上では「厳重警戒」となり、なるべく外出を避け室内温度にも気をつける必要があります。31℃以上では「危険」となり、家の中で安静にしていても熱中症のリスクがあるので冷房が必須となります。  

図7に、2021年の夏における6大都市平均の暑さ指数(WBGT)と熱中症搬送者数の推移を示しました。暑さ指数が厳重警戒の28℃、危険の31℃になると、熱中症の数が急増していることが分かります。

図7 暑さ指数が高いと熱中症も急増する
2021年夏における6大都市の平均WBGTと熱中症搬送者数の推移です。暑さ指数が28℃を超える「厳重警戒」、31℃を超える「危険」の日において、顕著に熱中症が増加していることが分かります。

出展:環境省 令和3(2021)年の全国の暑さ指数(WBGT)の観測状況及び熱中症による救急搬送人員数と暑さ指数(WBGT)との関係について
総務省消防庁 令和3年(5〜9月)の熱中症による救急搬送状況

暑さ指数の測り方と調べ方

暑さ指数は、熱中症のリスクをかなり正確に予測できる有効な指標ですが、その測定には、空気の温度・湿度、そして黒球で測るグローブ温度の3つが必要となり、ちょっと手間がかかります(図8)。

環境省 熱中症予防情報サイト
https://www.wbgt.env.go.jp
暑さ指数測定器(WBGT計)

図8 暑さ指数の測り方と調べ方
熱中症と強い相関がある暑さ指数を計測するには、空気の温度と湿度、そして黒球のグローブ温度の3つを計測する必要があります。 写真は研究用のものですが、家庭用の簡易的なものも市販されています。また環境省のサイトでは、暑さ指数の過去履歴とともに今後の予報も配信しています。 暑さの厳しい時期にはチェックして、暑さ指数が高い日には運動や行動をなるべくを控えることが熱中症予防に有効です。

家庭で測れる簡易なものも市販されているので、居室で計測しておいて28℃以上の厳重警戒なら、すぐ冷房をつけると安心です。  

また、環境省では暑さ指数の予報サービスも行っています。WEBでも確認でき、登録しておけば事前に警戒アラートをメール配信してくれます。特に、熱中症になりやすい高齢者の方々は登録して、警戒度に応じて冷房を使うことをおすすめします。

今回は、年々厳しくなる夏の温度と湿度の分析を通し、日本の夏が世界でもトップクラスに蒸し暑いことを見てきました。暑さには温度だけでなく湿度の影響が大きく、日本の高温多湿な環境は熱中症のリスクが高いです。湿度も考慮した暑さ指数をチェックして、28℃を超えたら躊躇せずに冷房を使うなど、熱中症は予防が肝心です。  

ところで冷房を使うとなると、電気の消費が心配になります(図9)。

図9 東京電力の電気予報
https://www.tepco.co.jp/forecast/

この夏は電気不足が懸念されたため、政府は「電力需給ひっ迫注意報」を発令し、節電を呼びかけました。幸い、この夏は太陽光で昼間に発電が行われたために電力不足は起きませんでしたが、次の冬に向けては油断ができません。厳しくなる電力需給の中で、健康・快適な環境をどう守るか。この連載では引き続き考えていきたいと思います。


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